少しの安堵 ページ11
太宰はAの下校するタイミングに合わせて、あの橋へと向かっていた。
実を云うとここ最近、仕事が多くてなかなか会うことができず、其の上今日もやるべき事がある。
そんな彼が例の橋へと向かう理由は、Aが生きているのか如何か。其れを確かめることだ。
*
昨日、中也は担いで運ばれている最中に一度だけ言葉を話した。『Aが狙われている』だとか、そんな事を。
太宰としてはヴェルレエヌにポートマフィアに関するの資料を渡す予定だし、Aが狙われていると聞いて最初に思った事と云えば「まぁ、そんな気は少なからずしてた」だった。
そんな淡白な物だった『Aが死ぬ』可能性が、後になって太宰に重くなってのしかかる。
「Aちゃんが死んだ所で如何もしないでしょ。もう其れっきりってだけで」
そうは口に出してみても、其れが嫌だと何処かで考えている。
「大体、逢いに行った所で暗殺王に狙われてるあの子が生きてる可能性なんて無いし、生きてたとしても、今日たまたま熱出して休んでたりしたら無駄足になる訳で。……あぁ、もう!」
太宰に関しては珍しく整理が付かない自分の心境に、本人も些か困惑している様だった。
橋に着いた彼は、欄干から身を乗り出していつかの様に流れる川を眺める。
やがて少し落ち着いたのか、身を引っ込めたと同時に向こうから此方を眺めている少女を見つけた。
「えーっと……。お久しぶりですね、太宰君」
少女の──Aの無事を確認して、太宰は言葉で表し難い感情に苛まれた。
ぐしゃぐしゃと己の髪を掻き回して「あー」と意味のない言葉を発した後に深い溜息を吐いて、其れからAの方へと視線を向けた。
「Aちゃん、生きてたんだね」
「一寸其処を動かないで下さいね。一発殴るので」
「ごめん、ストップストップ。落ち着いて、ね?」
いざ顔を合わせてみて、何を云えばいいのかを迷ったの挙句に発した言葉は明らかに間違いだった。
太宰は肩をグルグルと回しながら此方へ歩いてくるAをみて、其れを自覚した。
*
あの橋の欄干から身を乗り出している相手を、Aは知っている。
遠くでも、其れが誰なのかが判った。
其の相手の元へ向かう途中、Aは無意識に口元に笑みを浮かべる。
なんだ、なんだ……。飽きられた訳じゃなかったんだ。
────良かった。
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黒猫 - pixivの方でコメントできないのでこちらでさせていただきます。相変わらず面白かったです!他の小説も読ませていただきました。ポケモンの「顔面600族は見慣れてるから」で「スゲェ」ってなりました。私は何回見ても慣れる気がしません…。次の更新、楽しみにしてます! (9月3日 16時) (レス) id: 4dfbfc9ed5 (このIDを非表示/違反報告)
霧(プロフ) - 息抜きさん» 返信ありがとうございます!読みづらいことは無いです!普段pixivで読んでいるので、名前変更は出来ても出来なくてもそんな気にしてないので!ただ仕様なのかどうなのか気になっただけです!返信ありがとうございました!これからも楽しみにしています! (6月4日 18時) (レス) @page16 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 霧さん» コメントありがとうございます! くるっぷには占いツクールの様に、名前表記を変更する事が出来ないんです😭 読みづらくて本当に申し訳ないです…… (6月3日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
霧(プロフ) - コメント失礼します!いつもワクワクしながらこの小説を読ませていただいております!主にpixivで読んでいるのですが、くるっぷというサイトでも小説読みました!質問なんですが、あの(名前)は変更できるのでしょうか?それともそういう仕様なのでしょうか? (6月2日 22時) (レス) @page17 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - ほしくずさん» お待たせして申し訳ありません。昨晩から色々と方法を試してみたのですが、いまいち進展がなかったので、くるっぷというサイトも使用してみる事にしました。わざわざアプリを入れる手間をかけて頂いたのに、解決策を見つけられず申し訳ないです……。 (5月25日 13時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年12月28日 22時