Episode2 レモンの香り ページ7
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最近よく夢を見る。
幼いころの私が、同じくらい幼い男の子をほかの子供たちからかばっている夢。
泣いている男の子を背にかばって、いじめないで！って。
そんな夢。
いじめっ子たちを追い払うと幼い私は必ず背中にかばっていた男の子に手を貸して、そして、「――は泣き虫さんだね」って笑う。
多分名前を呼んでるんだと思うけど、その部分だけがいつも聞き取れない。
そして、目を覚ました私は必ず泣いている。
頬に涙が伝った跡があって乾いてしまっているのを見て、あぁ今日はあの夢だったんだなって思う。
今朝もその夢を見たばかりだった。
その夢を見ると無性に、私は彼らに会いたくなる。
その日のお昼時。
向かいのデスクに座る二宮くんが大きく伸びをしたのが目の端に映って私は作業を止めて思い出したように時計を見た。
時刻は昼休憩の始まりを過ぎていて、そういえば何人か外に出て言ったような…とぼんやりと考える。
「おい瀬那、飯行こう」
「そうだね。あ、松本くんは誘う？」
「そりゃ誘ってやらないと、かわいそうでしょ」
ニヤリと笑った二宮くんがコピー機を使っていた松本くんの肩を叩いた。
「さぁ潤くん、今日こそアタックしたらどうかな」
「え！」
「ってわけで、飯行くぞー」
ぽんぽんと二回松本くんの肩を叩いて、二宮くんは先に出入り口へと歩いていく。
「ちょ、待ってくださいよ二宮先輩！無理っすよ！」
顔を真っ赤にした松本くんが抗議の声をあげたけどそれと同時にコピー機がピーと印刷完了の音を告げた。
「あはは」
最近恒例のやり取りに苦笑しつつ、私も財布をもって立ち上がる。
「松本くんもう行ける？」
「あ、はい。行きます」
パパっと支度を済ませた松本くんは軽やかに事務所の扉を開けると「どうぞ」と笑う。
相変わらず、二宮くんと違って松本くんは本当にイケメンだ。
「ありがとう。二宮くんとは大違いだね」
「そうっすかね」
照れたように松本くんが笑う。
この子は本当に、見た目の強引そうな印象とは裏腹に純粋で素直でとてもかわいい。
櫻井くんもこのくらい素直になればいいのになぁなんて余計なことを思ったのはきっと、松本くんと櫻井くんが同じような年だから。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年1月24日 21時
