ねがいごとキャンディ《ars/s.s/0125》 (ページ29)

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Episode5 花指輪の栞ページ29

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今年もあと三週間ほど。

ねがいごとキャンディをもらった日から一週間後の昼間に、私はその栞を見つけた。

自分の記憶を確かめるために部屋中あちこちを捜索している最中だった。

栞は私が小学校低学年の頃によく読んでいた魔法使いが出てくる絵本の間に挟まっていた。

手のひらに収まるサイズの栞は手作りのようで押し花が存在感を放っている。

白い花で作られた、とても小さな指輪のようだった。

「……これ」

その指輪は夢の中で男の子がプレゼントしてくれたものによく似ている気がした。

明らかに子供用の小さな指輪。

ほかでもない、私が大好きだった絵本から出てきた指輪。

「ただの夢じゃなかった……」

あれはやっぱり、ただの夢じゃなかった。

どこでもらったのかもわからない。

だけど、この栞を見ているだけで泣きそうになってしまう。

懐かしくて、温かくて、そして悲しい。

胸の底で、ふたを叩く音がする。

コツンコツンと、押し開けようとする音が。

だけど、何も思い出せなかった。

どんなに栞を見つめてみても、どれだけ握りしめてみても。

これは私の大切なものだって、そう思うのに。

どうしても何も思い出せない。

栞に閉じ込められた思い出が、出してって言っている気がするのに。

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