Episode8 -5 ページ5
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起きなきゃ。
起きて、確かめなきゃ。
彼の名前を呼んで…！
「んん……翔……？」
「！…チッ……ほら雅紀、貸せ」
「…うん」
「いざとなったら最終手段だ」
「っ、ちょっと待って翔ちゃん！まさかそれを使うつもり！？」
「そうだよ！」
「ダメ！それはダメだよ翔ちゃん…！もうあんな悲しいことなんて……！」
重たい頭を持ち上げる。
声の方に顔を向ければ、上着を着た櫻井くんとその腕をつかむ相葉さんが目に入った。
次第にクリアになる視界の中で、月と同じ色をしたキャンディが目に入る。
「……っそれ！」
「チッ……」
「待って、翔ちゃん！」
私が目を見開いたのと、櫻井くんが相葉さんを振り払って飛び出していったのが同時だった。
考えるよりも先に、足が地面を蹴り上げる。
「待って、翔……！」
初めて呼ぶはずの彼の名前が自分でも驚くほど口に馴染んで、そしてなぜだか胸が締め付けられて苦しくなった。
上着も着ないまま外に飛び出す。
「俺向こう行くんで、瀬那さんはあっちに！」
「はい！」
「あの……翔ちゃんのこと、お願いします」
振り返ってそう言った相葉さんは、誰よりも泣きそうな顔をしていた。
「はい…！」
言い終わらないうちに駆け出す。
脳裏に浮かぶ、彼の名前。
何度も夢に見た、私が覚えていない男の子。
それは、魔法をワクワクするといった相葉さん？
それとも、名前を呼ぶだけで苦しくなる櫻井くん？
あっちにこっちに、天秤が揺れる。
だけど、心が叫んでいた。
翔を止めなきゃ、と。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月6日 21時
