Episode12 -4 ページ34
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学校で友達も何もかも失くした私を、翔は変わらず放課後に迎えに来た。
彼氏がきたよと私をからかっていた友達はいなくなって、幼馴染だってばと返していた少し面倒だったやり取りすらも、遠くに行ってしまった。
あんな何気ないちょっと面倒なやり取りこそが、実は幸せなことだったということに私はたぶん気づいていなかった。
それでも翔はいつも通り廊下の柱に背を預けてただ私を待っていて、私は終礼が終わると一目散に教室を抜け出した。
翔はじっと出入り口を見つめていて、私が扉をくぐると必ず翔と目が合った。
その瞬間少しだけ柔らかい表情になることを、翔を避けるように帰っていく生徒たちはきっと知らない。
それが私の昔と形の変わった優越感だった。
「帰ろう、A」
「うん」
私と一緒にいたら翔まで避けられるに違いない。
私はもう一月もすれば卒業だけど、翔まだこれから二年もある。
だから翔と一緒にいるのはよくない、そう思っていた。
だけど結局翔は私を迎えに来るし、私は翔から逃げられない。
翔がいなければきっと、私は生きてすらいけなかった。
互いがいれば。私たちは世界なんてどうだってよかった。
隣を歩く翔は、私のスカートが校則通りの膝丈になっていることに気づいているだろうか。
「なぁ、寄り道しよう」
「いいけど…今日は喧嘩はいいの？」
「毎日喧嘩してるわけじゃない」
「そう？」
「そう」
重たいスクバを私の分まで担いでいる翔はすたすたと歩いていく。
すっかり力の付いた少年は可愛い弟のようなものではとうになくなっていた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月6日 21時
