ねがいごとキャンディ ○2○ 《ars/s.s/0125》 (ページ32)

今日:1 hit、昨日:8 hit、合計:138,722 hit

Episode12 -2 ページ32

.

翔は無言で私の手を引いて屋上へと向かった。

本当は立ち入り禁止だけど、翔がいつも入り込んで昼寝をしていることを私は知っている。

階段を上る時に私が上履きを吐けていないことに気が付いて、一度立ち止まってくれた。

「さっさと履いて」

「もう、翔がずっと引っ張ってるからでしょ」

文句を言いながら靴を履くとまた翔が私の腕を引く。

屋上まで来ると翔はようやく手を放した。強く握られていた手首はうっすらと赤くなっている。

「ねぇ翔、私授業に戻らないと」

「なら振り切って逃げりゃよかっただろ」

「それはそうだけど」

結局、私は翔には勝てないのだ。

いつの間にか翔のことを好きになっていたのだと気が付いた幼いその日からずっと。

座り込んだ翔の隣に私も腰を下ろす。

スカートのプリーツが乱れることが気になるのは、一緒にいるのが翔だからだ。

くいっと引っ張りながら座り込むと、風がひとつスカートの裾を揺らした。

「スカート、短すぎだろ」

「そう？みんなこんなもんだよ」

「もうちょい伸ばしとけよ」

「うーん…わかった、翔がそういうなら」

裾をまたくいっと引っ張ってみる。

明日は一折分長くしようかな。

.