Episode11 -3 ページ29
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「瀬那さん昨日言ったでしょ？怖いって」
「あ…」
「なんてぜいたくな悩みなんだ…って、昨日は思ったけど。いや、本音を言うと今も思ってるけど。
だけど、だけどね……。
君に怖いって思われたままなんて、翔ちゃんは辛くないのかなって。
ずっと瀬那さんのためだけに生きてきて、その瀬那さんの中から自分の存在を消して、そうして必死に翔ちゃんが守ってきた瀬那さんに、本当の想いを伝えられないのは実は翔ちゃんにとって悲しいことなんじゃないかなって」
ぜいたくな悩み。
昨日と同じことを言った相葉さんは、しかし私をやさしい目で見つめていた。
「ごめんね、俺言葉がうまくないというか、あんまり頭よくないからさ、翔ちゃんみたいにわかりやすくしゃべれないんだけど。要するにね……」
相葉さんは乾いた唇を潤すように一度引き結んで、それから言った。
「瀬那さんに好きだって伝えられないなんて、翔ちゃんは苦しいだけなんじゃないかなって、思ったの」
「…っ！」
「君に好きだよって伝えることが、本当は翔ちゃんが翔ちゃん自身も気づかないほど心の奥で……ううん、気づかないふりをして心の奥に押し殺した、本当の願いなんじゃないかなって、そう思うんだ。ねぇ瀬那さん、俺は間違ってるかな」
最後の言葉は震えを押し殺すような声だった。
その言葉を聞いて初めて、私は相葉さんが泣きたいんだということに気が付いた。
いつもと同じふりをして、本当は心の中で泣いていたんじゃないかと思い至った。
思わず目をそらしてしまったのは、私はなんてぜいたくな悩みをこの人に告げてしまったんだろうと思ったからだった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月6日 21時
