Episode11 -2 ページ28
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「なにが…ですか？」
「俺なりにね、考えてたんだ。翔ちゃんにとって何がいいことなのかなって」
翔にとっての、いいこと…。
「こう見えて俺って実は高校時代ヤンチャしたんだよね。翔ちゃんとはそのころからの付き合いで俺は君みたいに長い間翔ちゃんと過ごしてたわけじゃないけど、大事な時期にずっとそばにいた自信はあるからさ。君に負けず劣らず、翔ちゃんのことが大好きなわけ」
静かに語りだした相葉さんは懐かしむように笑みを浮かべていて、翔とは形の違う、けれど大きな瞳はどこか遠くの景色を映しているようだった。
「あの頃から翔ちゃんはいつも自分の願いを殺すようなことばかりしてたけど、君から離れてからそれがさらに加速しててさぁ、そんなんじゃ疲れちゃうよーなんて言ってみたこともあるんだけどさ、自分は幸せになる資格はないからいいんだっていつもの仏頂面で言うばっかりで、頑なでねー。
泣きもせずに一人ぼっちでいることを選んでる翔ちゃん見てたらさ、俺くらいは翔ちゃんを甘やかしてもいいんじゃないかなって、思って。翔ちゃんはそんなのいらないって怒りそうだけどね。
でも俺は、そんな翔ちゃんの願いをどうしても叶えてあげたくなったんだ」
少し悲しそうに、相葉さんの眉と目尻が下がる。
「翔ちゃんの願いはいつも誰かのことばっかりで、自分の願いはないの？って聞いたこともあるんだけど、これが俺の願いだからいいんだって男前なこと言っちゃってさぁ。
だけど俺は、翔ちゃんの願いをかなえることを優先してあげたかったから、あんまり翔ちゃんの生き方に口出さなかったのね。
でも、今朝君の顔見てたらね、ほんとにそれでよかったのかなぁって考えてる自分がいて。
夜中に翔ちゃんが出て行った時にはそれが翔ちゃんの願いなら叶えてあげなきゃって思って引き止めなかったんだけど」
相葉さんが久しぶりに私の顔を見た。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月6日 21時
