ねがいごとキャンディ ○2○ 《ars/s.s/0125》 (ページ17)

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Episode9 -9 ページ17

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「なんてね。ちょっと言ってみたくなっただけだから、気にしなくていいよ」

おもむろに立ち上がった相葉さんは「翔ちゃん遅いね」なんて言いながら自分のマグカップをもってキッチンの方へ行ってしまった。

私は相葉さんという人を少し誤解していたかもしれない。

でもよく考えてみれば、私の記憶を消してまで私の前から姿を消した翔が身を寄せていた人だ。

しかも、私が翔の幼馴染でありその記憶を失くしていることを知っていた。

翔自身に聞かされなければ知りようのない秘密を、相葉さんは翔と共有していたのだ。

それを誰にも漏らさず。

もちろん私にだって何も言わず。

それがどういうことなのか、私にはわからない。

相葉さんと一緒だ。

相葉さんが私と翔の過ごしてきた時間を知らないように、私も相葉さんと翔が過ごしてきた時間を知らない。

あの翔が、幼馴染の記憶を消したなんて突拍子もない秘密を共有し、しかも同じ家で暮らし同じ職場で働いて、そのうえで私を気にかけてくれていた人。

翔が私以外で一番……いや、私という存在を失くした翔がこの世界で最も信頼している人、それが相葉さんなんだ。

そんな人に私の「怖い」はどう聞こえるんだろうか。

しばらく茫然と考えてみたけれど、やっぱり私にはわかりそうになかった。

ただ聞きたいことは翔本人に聞かないと…と、その覚悟だけが形になっていた。

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