ねがいごとキャンディ ○2○ 《ars/s.s/0125》 (ページ16)

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Episode9 -8 ページ16

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沈黙を耐えるように私もマグカップに視線を落とす。

見慣れたお気に入りの紅茶の水面に、泣きそうな顔をした女の子が映ってた。

「俺にはね」

相葉さんがふと口を開く。

「君の怖さがわからない」

どこか冷たくも感じる、そんな声だった。

相葉さんの視線は私に向けられていなかった。

私のさらに向こうにある、お風呂場…ここにいない翔に向けられているようだった。

「俺は高校時代からの翔ちゃんとの付き合いだから、君たちみたいにずうっと一緒にいたわけじゃないし、そんなに絶対的な味方だって思って翔ちゃんと接してきたわけじゃない。だからね、わからないんだ。あんなにやさしくてつよくてけなげで誰にでも分け隔てない翔ちゃんがこの世でただ一人特別扱いしてるっていうのに、その寵愛を一身に受けてるっていうのに。それをわかっているのに……いや、わかっているからかな。怖いなんて、ぜいたくなことが言えるのは」

「………っ」

息を、飲んだ。

相葉さんは怒っているわけでも責めているわけでも、ましてや同情しているわけでもなかった。

ただ淡々と、言葉を紡いでいた。

「翔ちゃんは絶対に瀬那さんの味方なんでしょ？そんな人を怖いって思えるほどの想いが、俺は少し……羨ましいかな」

マグカップを握りしめてうつむく。

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