Episode9 -4 ページ12
.
湯船に入れた入浴剤がふつふつと泡をまといながら溶けていく。
淡く色づくお風呂を見ながらそういえば翔はディフューザーとかキャンドルとかそういうものが好きだったなぁと思い出す。
昨日まで…ううん、今朝までは思い出すことのなかった大切な記憶。
ゆらめくお湯の中で両手を握りしめる。
失くしていた落としものにようやく触れることができたような、そんな気がした。
入浴剤には香りが付いていたようで、お風呂から上がるとほのかに甘酸っぱい香りがした。
KIWIの女性店員さんに勝ってきてもらったからと相葉さんが言ってくれた新品の下着をありがたく着させてもらって、それから翔の服を手に取る。
赤い色のちょっとテロンとした素材のたぶんルームウェア。
ボタンじゃなくてかぶるタイプのやつ。
両手に持って少しだけためらって。
覚悟を決めてえい！と上からかぶる。
亀みたいに首を出すと、ふわりと甘い香りがした。
翔の香りがするなぁ…なんて考えて。
「……っ」
すぐにすごく恥ずかしいことに気が付いて頭を振った。
鏡に映る私の赤くなった頬はお風呂上がりのせいにした。
「あの、ありがとうございました」
「あ、瀬那さん。湯加減大丈夫だった？」
「はい」
「じゃあ俺も入ってくる」
「うん、行ってらっしゃい翔ちゃん」
ソファから立ち上がった翔がちらりと私を見て動きを止める。
「……」
「えっと…なに？」
「………別に」
特に何を言うわけでもなく、翔はふいと顔を背けて脱衣所に行ってしまった。
「？」
「あはは、気にしないで大丈夫だよ瀬那さん。翔ちゃんってば自分の服を着た瀬那さんを見て照れてるだけだから」
「……てれっ…！？」
「あ、瀬那さんも真っ赤になった」
くすくすと相葉さんが笑っている。
私は自分でもわかるくらい真っ赤になった頬を両手で押さえて逃げるように背中を向けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 726人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月6日 21時
