針仕事 珀壱 対面*side探偵社 ページ1
「あ、あの、これは一体?」
「すまないねぇ、Aちゃん。敦君がどうしても〜って」
「誤解を生む発言やめてください!」
怪しまれないように玉乃衣さんを探偵社に呼び出し、言葉巧みに太宰さんが椅子に座らせ、申し訳なさそうにしながらも鏡花ちゃんが【夜叉白雪】で素早く縛り付けた。このことを計画したのは社員全員。僕の云い出した疑問に全員が興味を持ち、今日に至る。
「却説、Aちゃん、一寸ばかし眠って貰えるかな?」
「はい?」
どすん!と思い一撃が玉乃衣さんの鳩尾に刺さる。夜叉の峰打ちとは云え、痛そう……
「……どうだ?」
「何も起きませんね……?」
「これで何も無かったら、敦君は懲戒免職かな」
「や、辞めてください」
声を潜めて様子を伺っていれば、カツンと何かが落ちた音がした。
「……痛ェ」
「えッ?」
しっかりと縛り付けられた椅子をガタガタと鳴らし、盛大に舌打ちをかます、玉乃衣さん。倒れる事はなかったものの、苛立った様を隠そうとはせず近くにあった机を思いっきり蹴り飛ばしていた。
「誰だ。朝ッぱらから“俺”を呼び出した大莫迦野郎は」
解けかかった長い月白色の髪の隙間から鋭い眼光が覗く。これは、否、“こいつ”は、
「よぉ、先日ぶりだな?探偵社のニャンコ?」
目が合うなり莫迦にしたように嘲笑する“彼”。この場に居た誰もが混乱を隠せずにいる。あの温和な玉乃衣さんからこんな言葉遣いを聴いたことが無いから。
「なんか変だッて思ったら、探偵社かよ。こっちは仕事明けで眠てェんだけど?」
「貴様、何者だ」
「何者ッて、アンタ、店に来たことねぇの?ンな訳ないか」
「惚けるな」
「惚けてねェよ」
耳障りな嘲笑が、一つ響いた。
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志希 - 私好みな素敵な作品...ありがとうございます...。これはもう、続かないのでしょうか??すっごい好きだから更新してくれる日を待ってます! (2023年2月20日 23時) (レス) id: efb8355445 (このIDを非表示/違反報告)
菜種梅雨佐矢花(プロフ) - すいません、リクエストなのですが、猟犬の条野採菊さんを書いて頂けないでしょうか?お話楽しみにしております (2020年9月26日 0時) (レス) id: 495b618e4b (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - とても続きが気になる物語だったので、時間があるときに更新よろしくお願いします。頑張ってください! (2020年8月9日 21時) (レス) id: a43add877a (このIDを非表示/違反報告)
桜の下(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました!更新楽しみに待ってます!頑張ってください! (2020年5月4日 10時) (レス) id: 6dcf85fe6b (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - 初めましてです。最初から最新話まで一気に読みました!とても面白くて、大好きになりました!応援してますので、これからも頑張ってください! (2020年3月24日 18時) (レス) id: 1b2131ed6b (このIDを非表示/違反報告)
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