Another Story 1.2 ページ36
「…
ドンヒョク…？」
Aがそうやって俺の名前を呟いた瞬間、イジェノの顔は更に歪んだ。
「…A、行こう？」
「えっ…。」
この状況がよく分かっていなさそうなA。
戸惑ったAの表情に、違和感を覚える。
「…
A、待って。」
イジェノに手を引かれて連れていかれそうになるAを引き留めると、Aは俺の方を見た。
「…さっきのカトク、どういうことか聞きたい。
俺、Aに何か嫌なことした…？」
「…
カトク…？」
Aは戸惑うような表情をした。
目を泳がせながら、こめかみ辺りを人差し指で掻く。
「…
何のこと…？」
「…へっ？」
「いつの話…？」
俺にそう聞くAは、本当に何も分かっていなさそうだった。
困ったように考え込むAに、俺も戸惑いが隠せない。
「…あのさぁ、」
少しの沈黙の後、口を開いたのはイジェノだ。
奴は、明らかにイライラしている。
「…僕の彼女に何の用？
Aと僕の邪魔しないで。」
「…っ、なんでそんなことお前に言われなきゃいけないんだよ。」
「そんなの、Aを誰にも渡したくないからに決まってるでしょ。」
そう答えるイジェノを見つめるAの顔は、怯えているようにも見える。
…前からずっと思ってた。
Aがイジェノを見るとき、奴の顔色ばっかり伺って、ご機嫌取りをしているようにしか見えないのだ。
美術室で見た、絵を描いている時の幸せそうな表情とは全く違う。
「…A。
さっき俺に『邪魔だから2度と連絡すんな』ってカトク送ってきたとき、どこにいた？」
イジェノの言葉を無視して、Aに問いかける。
そうすれば、Aは目を見開いて「…何の話？」と俺に聞き返してきた。
「…っ、
…やっぱり…。」
イジェノのAへの執着は、度を越している気がした。
あのカトクを送った犯人がイジェノならすべて説明がつく。
「A、
もう遅いし、早く帰ろう。」
だけどイジェノは、悪びれる様子もなく、Aの頭を撫でてそう言った。
Another Story 1.3→←Another Story 1.1
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1355人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナギ(プロフ) - とても面白かったです！でも恐いです笑ロンジュンが一番気の毒ですね……新しい作品もお待ちしております。 (2023年3月29日 16時) (
レス) @page50 id: b8f2817426 (このIDを非表示/違反報告)
XLR7CMroSzOYUFU(プロフ) - 最高でしたありがとうございました (2022年8月3日 16時) (レス) @page50 id: 58b6c00705 (このIDを非表示/違反報告)
saki(プロフ) - 完結おめでとうございます！本当に面白い作品に出会えて嬉しい限りです！ケーキのくだり、めっちゃ鳥肌たちました… (2022年6月24日 17時) (レス) @page50 id: 00b56992b8 (このIDを非表示/違反報告)
alone99(プロフ) - いや、最後鳥肌…完結おめでとうございます！ (2022年6月24日 14時) (レス) @page50 id: 7bd05b70b6 (このIDを非表示/違反報告)
hana(プロフ) - 完結おめでとうございます！いやか､最後の最後まで…まさか過ぎました…！！とても素敵なお話でした！ (2022年6月23日 21時) (レス) @page50 id: 7509578280 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：世莉 | 作成日時：2022年4月1日 22時
