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余韻に浸る間もなく、彼は仕事に戻り私は家路を急ぐ。
だけど彼の香水が私の服にも移っていて、
それだけで私はまた満足だった。
週末の午前1時。
もともと鬱蒼とした、異様な空気の漂うここら一帯は、女性が一人で歩くには危険すぎる。
地元の人すら近寄らない路地裏を縫いながら、私は大通りまで向かった。
少し目を道路脇に傾ければ、
こちらをじろじろと見てくる男、男、男。
頬はやつれ、目は窪んで、
どこからどうみても薬漬けの集団。
道路の向こうからは叫び声がしきりに聞こえてきたり、うなだれてる人が重なっていたり、訳のわからない臭いが周囲に漂っていたり、ここをソウルの吹き溜まりとでも呼ぼうか。
私は背筋をぴんと伸ばして歩く。
声をかけられても全て無視。
…それだけでここを通れたのに、今日はそうじゃないようだった。
『お姉さん、いる？』
声の主の方に視線を下ろせば、爛々とした目つきの男が地べたに座って腕の内側をつんつんと刺す仕草をする。
私が無視して去ろうとすると、今度は反対側に座っていた男がいきなり叫んだ。
『うわあああ！！な、何をするんだあ！！でっけぇ虫が俺を襲おうとしてる！助けてくれええ！！！』
「きゃっ…！」
いきなり彼が立ち上がったかと思えば、私に覆い被さってこようとする。
すれすれのところで交わすと、彼は路地にそのまま倒れ込んで、誰かの鞄の中身が地面に散らばった。
ハーブ、白い粉、注射器。
…早くここを離れなきゃ。
「痛ってぇ…！ちょっと、そこの姉さん！」
「え…？」
男の陰から、頭を押さえて顔を見せた青年。
まだあどけない大きな瞳、金にブリーチした髪、少し訛った韓国語。
彼は威勢よく立ち上がると、気を失ったさっきの男を虫のように蹴り飛ばして私のもとへ歩いてきた。
「あれ、俺の商品なんだけど。姉さんのせいで使い物になんなくなったじゃん」
「そんなの知らないよ。倒れたのはあの男の人でしょう？」
「チッ… …口答えすんな！」
私の肩を勢いよく突いた彼。
近くで見れば、…きっと私と年頃の変わらない、むしろそれより若く見える美青年。
それなのにこんな場所で生きてるなんて。
悲しいやらむかつくやらで、この状況なのに私はどこか彼を哀れむような感情に浸る。
それに気付いたのか、
…彼はさらに激昂して、私に拳を振り上げた。
「…そんな目で見てんじゃねぇよ…！」
「っ、きゃあっ！！」
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らーみょん - ログインしないでも見れるってありますか？ (2021年9月20日 23時) (
レス) id: bc990f52e8 (このIDを非表示/違反報告)
れいら(プロフ) - WayV沼子さん» コメントありがとうございます！他の作品も読んで頂いてるんですね…!!かなり毛色の違う作品ですがどちらも応援してくださって大号泣です（ ; ; ）ありがとうございます!! ルーカスはかなり主軸の登場人物となるので、今後もご期待ください(^^)♡ (2021年9月20日 19時) (レス) id: c38a85a6a7 (このIDを非表示/違反報告)
WayV沼子 - 表現力、設定、どれも素敵な小説だと思っていたら、大好きな作者さんだったなんて…！感激です。これからも応援しています。大好きなルーカス出してくださりありがとうございます(涙) (2021年9月18日 1時) (レス) id: 2887d301bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れいら
| 作成日時：2021年9月14日 23時
