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テンは少し驚いたような顔をして、私を見つめた。
…自分でも驚くよ。
こんな欲というか、感情が、生まれてくるなんて。
私はテンと同じユニットに所属していて、
だけど私は歌もダンスも好きじゃないし、
…ううん、正確に言えば、“自分の”歌とダンスが好きじゃない。
だってあたし、自分のこと好きじゃないし。
自分を綺麗だとか、美人だとか、美しいとか、ほんとは1ミリも思ってない。
テンと言えば、誰もが知る通り最高のダンサーでありボーカリスト。私なんかが同じチームにいてはいけない存在だと、畏怖さえしていた。
だから敢えてテンといる時は仕事の話なんてしないようにしていたし、それはテンも理解して、察して、気遣っていてくれたと思う。
彼が直接私の歌やダンスをどうこうと言っていたことはあまり無いはずだし、あったとしても記憶に無い。
私だって、これからアイドルを続けていくかなんて分からない。今はここにいたいから、居るための然るべき努力をしているわけだけど。
もともとモデルや女優がしたかった。
いつの間にかアイドルになっていた。
チームやメンバーに不満があるわけじゃない。でも、自分には向いてない職業だと、ずっと感じていた。ほんの最近までは。
でも、そんな私が、今回テンと長い間離れてみて感じた思いっていうのは、
“触れたい”“愛されたい” そんな原始的な欲望は勿論あったけれど、
“テンと歌いたい”
“テンと踊りたい”
“WayVとして、活動したい”
…そんな、今までには感じたことのなかった、強い情熱に似たものだった。
と、思う。
そうだ。
イリチルのコンサートを見ても思った。
私は多分、私が思っているよりも、“WayVのみんな”とステージに立つことが好きなんだ。
…早く、ファンに会いたい。
私たちの歌とダンスを感じてほしい。
そのための努力なら幾らでもする。
こんな私の唯一の取り柄が、努力のためなら全てを犠牲に出来るくらい、何かに対して打ち込むことが出来るところだ。
多分、私たちにしか出来ないことがある。
イリチルがそうなように、
ドリムもそうであるように、
そしてソンチャンくんとショウタロウくんもそうであるように。
WayVにしか出来ないステージが、やっぱりある。
そして私も、そのステージにいたい。
そう感じたの。
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作者名：れいら
| 作成日時：2022年6月22日 1時
