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JO side
Aは育った環境が複雑だからか、精神的な愛情に飢えているところがあると思う。
だって、こんなにも“自分は誰にも愛されていない”と、まるで強迫観念のように思い込んでいるのだから。
本当の愛情を俺たちはみんな注いでいるのに、それをしきりに疑って、受け取りたがらない。そしていつもの表情で鼻で笑い、どこかへ歩き去っていく。それがAだ。
Aは昔から一匹狼で、誰も近寄れない女神のような、そんな存在だった。
だけどそれは、そう在ることで必死に自分のプライドを守り、他人との接触から逃げていたのだろう。
ひたすら美しくあることにこだわり、ちやほやされることに必死になり、自分を磨き続ける。
そんな檻の中に閉じ込められた、悲しいプリンセス。
本当の自分を知られたくない、知られたら嫌われると、Aはそう思い込んでいる。
Aの自己肯定感の低さや、その性格の根本にある異常なまでのネガティブさは、やっぱり育った環境に起因するんじゃないかと思う。
勝ち気に振る舞って、いいようにメンバーを弄んで、きゃははと笑っているような普段の姿だって、実は全て虚像に近しいものだろう。
それは、Aが必死に作り上げた蜃気楼。
本当のAは、あんなに強くない。
誰にも愛されない自分のことが嫌いで嫌いでたまらない、そんな劣等感の塊みたいな自分の精神を、テンという“憧れ”“羨望”“自分にとって完璧な存在”、そして“愛情の具現化”のような存在を手に入れることで、Aは自分を補完しようとしたのだろう。
あれだけAがテンに執着する理由は、俺にとっては明白だ。
テンを保有することで、ようやく自分は精神的に満たされて、完璧な状態になれるから。
どうしてその役割が、Aに無限の愛情を注いであげられるウィンウィンではだめなのかと、疑問に思ったこともあった。
現にAはウィンウィンが韓国に来たり、中国で一緒に活動するようになってから、少しずつ大人になってきたと思う。精神が安定して、成長したというか。
じゃあ、ウィンウィンと同じ役割をテンにも求めていたのだろうか。
…ううん、違う。
家族とは違う、全くの他人に、自分を認めてほしい。
自分のことを、愛してほしい。
それだって人間の原始的な欲求の一つだ。
Aはただ、“テン”という人間だけに、自分のことをひたすら愛してほしいのだろう。
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作者名:れいら | 作成日時:2022年6月22日 1時