カシスの残り香 ページ24
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TY side
…暗い部屋
初夏の心地のする夜は
窓を開けて 風を感じて
靡くカーテンを見ながら、眠りにつきたい
Aがそんなことを言っていた
俺はよく、覚えていた。
理由は無かった。
ただ一目、君を見たその日から、
なんとなく、惹かれてしまった。
肉体的な欲望より、手に入れたいという衝動より、認められたいという渇望より、
それよりも精神的な繋がりを求めていたんだろうなって 今の俺なら分かるけれど
だけどあの頃の俺は、自分に戸惑っていた。
Aを見て
“俺と同じだ”って
…ただ、なんとなく、そばに居たいと願った
そんな感情、初めてだったから。
「…なに、これ」
TY「カシス。俺、それ好きなんだ」
「ああ…。実を食べるのは初めてかも…」
珍しいものだよね、と 呟いて
暗い部屋でその一粒を口にする、横顔。
俺はただ眺めていた。
それだけで良かった。
Aのことを思うと、心まで微笑むことが出来た、そんな気がした。
今日のデザートは、ベリーヨーグルト。
俺が好きな苺や、ブルーベリーや、この前店でたまたま見つけた砂糖漬けのカシスの実を、Aは気に入ってくれただろうか。
Aは昔、俺の手料理が好きだと言った。
メンバーの宿舎がバラバラになってから、俺の部屋に来る機会も前より増えた。
Aと過ごせる時間が増えた、それが無性に嬉しかった。
俺はAにとって何者でもなく、俺にとってもそれは同じであるはずなのに。
「美味しいよ」
TY「…ほんと?」
「でも少し、酸っぱいんだね」
TY「あははっ、そうだね。でも俺は好き」
「…うん、私も好き」
TY「…」
「テヨンイが作るものはぜんぶ、美味しいからなぁ」
器を置いて、窓の外を眺めて。
Aはいつもの調子で、そう言った。
だから俺も微笑んだ。
Aの頭を撫でたかったけれど、俺の手は、虚空を撫でた。
よく晴れた今日のような夜には、真っ白な月の光が部屋に射してくる。俺は明るい場所が普段はあまり好きじゃないから、夜も部屋の明かりはほとんど点けない。
月明かりのその青白さと、Aの横顔はよく似合っていた。
俺はそれが、とても好きだった。
「テンも同じ月、見てるかな」
TY「…」
「…会いたいなぁ…」
TY「……」
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れいら(プロフ) - 名無し26705号さん» Twitterの方全く更新できていなくてアカウント開いてすらいませんでした…そろそろ短編投稿しようかなと思っていたので、そのタイミングでの承認になるかと思います💦せっかくフォロリク送って頂いたのに申し訳ありません!🙇🏻♀️ (2022年6月2日 13時) (レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
名無し26705号(プロフ) - 今ってツイッターの承認ってされてないですか?😢 (2022年6月1日 18時) (レス) id: a987a7fbf2 (このIDを非表示/違反報告)
れいら(プロフ) - カオルさん» カオルさんいつもありがとうございます🥲🌹 仕込んだ小ネタ(言い方)が伝わったみたいでとっても嬉しいです😭💖 本当にありがとうございます💕 (2022年6月1日 0時) (レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
カオル(プロフ) - うわーーーー!そゆことかあー!!ほんとれいらさんのお話すべて!!大好きです😭 (2022年5月28日 1時) (レス) @page36 id: 2b37dccc92 (このIDを非表示/違反報告)
れいら(プロフ) - aさん» ありがとうございます😭カシスネタ(ネタ)気付いてくださる方がいて本当に嬉しいです…泣 Twitterまでフォローしてくださって本当にありがとうございます🥲💖これからもぜひ宜しくお願い致します!更新お楽しみにしてください🥰 (2022年5月25日 0時) (レス) id: 0149abc0ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れいら | 作成日時:2022年5月13日 17時