【東海】Deep Down (ページ31)

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青ルート４ページ31

あの後、パニックになりかけながらもなんとか平静を装って車へと乗り込んだ。

以降、一挙一動がぎこちなくなって、りょうくんに笑い飛ばされる。
いつもなら、このプレイボーイ！とかなんとか歯向えるけど、今はなんせ顔も見れないのだ。
お手上げ。

運転席側を視界に映さないように、窓から流れる景色を眺める。

「なんか考えごと？」

うわあ！急に話しかけないでよ！

「べ、別に…なんで？」
「なんかそんな顔してた」

そっち向いても窓ガラスに顔映ってるよ、とくすくす笑われる。
目合わせないようにしてることばれてる…

「やだー見ないでくださいー」

冗談っぽく返して、借りた上着の袖で顔を隠す。
私にはぶかぶかで助かった。

なのに、全然返答がなくてちらっと隣を見れば。

「…ちょっ、前見て！？」

じっと私を見つめているりょうくん。
生命の危機的な意味でドキってした！

「ていうかさ、嘘つかせてまで今日連れ出してごめんね？」

言葉とは裏腹に、ガラスに映るりょうくんは思いっきり笑ってる。

「いや、でもAも共犯か」
「言い方！」

確かに被害者ではないけど。
むしろご褒美だと思ってたけども。

「じゃあ次ごはん行くときは私が言い訳考えよっかな？」

暗に、また行きたいという意味を込めてつぶやく。

「うわ、Aわっる」
「りょうくんが言う？」
「じゃあそのままふたりで逃げちゃう？指名手配されるかもだけど」

甘いのか物騒なのかわからないけど。
りょうくんの声で再生されると、たちまちどんなセリフも甘く聞こえてしまう。末期だ。

そうこう言っているうちに、私のマンションの前に着いて。
お礼を伝え、二言三言交わしてからお別れした。

「はあ…」

車を見送り、その姿が見えなくなったのを確認してからたっぷりとため息をつく。

楽しかったけど、緊張した…
抱きしめられたときのぬくもりを思い出す。

その割にはあっさりした別れ際だったな、なんて思っている自分にも気付いたり。
いや、それでいいんだよ？
普通のことだもん、うん。

そそくさとマンションの中に入ろうとすれば、あのときと同じようにびゅうっと風が吹く。
腕をさすりながらハッとする。

「…あ！」

上着返し忘れてる！

やっちゃったよ！
これから二日間オフなのに！
絶対困るよね、どうしよう。
でも、りょうくんおしゃれだし上着なんていっぱい持ってるかな？

木がざわざわ揺れる。
うう、寒い…
とりあえず家に戻ろう。

着ている上着をそっと握りしめた。