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橙ルート4 ページ4

「A、今日合鍵持っとる?」
「持ってるけど…」

いいのか私?
留守番係どまりでいいのか?

いや、だめだ。
そもそも、今日からまたひとりか…なんて嘆いたけど、今の私にはそんなの耐えられない。
笑顔でおかえりなんて絶対言えない。

「待って、やっぱ私帰る」
「へ、なんで?」

てっちゃんが私をじーっと見る。

「家の掃除しよっかなって…」
「えー?もうあっち解約したら?ここ住めばよくない?」

…この天然人たらし!
恋人でもないのに、ただの友達なのにやすやすと!
あ、自分で言っててきつい。

「私もうすでに半分ここに住んでるよ」
「や、でもさ」
「それより鍵どこ?」

その話はもうおしまい。
ちょっとしんどい。
動揺を悟られないように、背を向けて鍵を探す。

「知らん」
「はぁ?出かけらんないよ?」

え、そのための私?留守番係?
ちょっと納得しかけて、また部屋を歩き回る。

「…あった!もー、家の鍵くらい自分で管理し…」
「ね、やっぱ泊まってって」

私の小言をかき消すような、真剣な声。

「なんで…?」
「別に?いつも泊まっとるやん」
「だから今日は久々に帰りたいんだって」
「もう夜遅いし危ないからだめ」
「まだ19時過ぎじゃん」

いいからここにおって!と、てっちゃん。
あまりの気迫に思わず閉口する。

「じゃあ行ってくるから。もし誰か来ても絶対ドア開けちゃいかんよ?」
「え、ちょっと、」
「チェーンもつけてね?」
「いや、私…」

さっきの沈黙を肯定と受け取ったのか、次々とたたみかけてくる。

「なんかあったら連絡すること。わかった?」
「……はぁ、わかったよ」
「よろしい」

結局、勢いに飲まれてしまった。

「どこ行くか聞かんの?」

靴を履きながら、てっちゃんが私を見上げる。
なぜか難しい顔。

「聞いてどうすんの?」

少し低い声が出る。

「…気にならんのかなって」

だいたい予想できてるから考えたくない。
あと、どこだろうと行かないでほしい。

こんなこと言われて困るのはそっちでしょ?

「さぁね」
「もー…あ、ねぇA」
「なに?」
「なにって、ん!」
「ん?」
「いってらっしゃいのちゅーは?」

軽く、本当にかるーくつむがれる。
それを聞いて、
バタン。思わずドアを閉めてしまった。

もうちょっと重みのある言葉なんじゃなかったっけ、それ。
女遊びする前なのに、私にそんなこと言えるんだ。
…わかってたけど、私に対しての後ろめたさなんて微塵もないんだ。

はああ。ひどい動悸がする。

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作者名:V | 作成日時:2018年10月29日 17時

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