【東海】Deep Down (ページ24)

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緑ルート１０ページ24

唇が軽く重なる。
意外にも、さっきと同じような触れるだけのキスだった。
なにも言わない私を見て、もう一度、顔が近付く。

次を受け入れてしまったら。
ここで絆されてしまったら。
まわらない頭で必死に考える。

そんな必要はなかったのだけど。
すん、とあの甘い香りが鼻腔を刺激して、寸前で我に返る。

「…やっぱり、やめよ？」
「は、今さらかよ」
「だって…」
「だってなに。そいつのこと忘れられんとか言うつもり？」
「しょうがないじゃん…」

チッと短く舌打ちをされる。
怖い。けどやっぱりだめなの。
好きな人とのキスなのに、こんなにゆがんだ気持ちになる。

「だらだら引きずんなよ、フラれたやつのことなんて」
「じゃあさ、としみつは相手のこと忘れられる？フラれて、はいそうですか、じゃあ次って思えるの？」
「…俺は、」

としみつが苦い顔をする。

「としみつだって、こんなのだめだってわかってたんでしょ？だからさっきも今も、こんな軽いキスにし、っ！」

急にぐっと引き寄せられて、再びキスを落とされる。
違うのは、

「…や、」
「っせぇな」

打って変わって、とても強引で。
ぎゅっと唇を閉じても、舌で無理やりこじ開けられる。
胸が苦しい、息もできない。
こんなに苦しいキスは初めてで、つう、と頬が涙を伝う。

それを見たとしみつの目が少し見開かれて。
眉を寄せて、おもむろに私から離れる。

「…泣くほど嫌かよ」
「じゃなくて…こんなことしても傷が深まるだけだよ…」
「お前こそわかったような口きくなよ」

冷たい声。
なのに、なぜか。
どこか悲しそうで。

「俺を傷つけた分際で説教たれんな」
「どういうこと…」
「俺はお前とキスしたって傷つかんし、別にフラれた相手を忘れたりもせん」
「うん…？」
「これがどういう意味かわかるか？」
「うーん…？」

全然わからない…
首を傾げて続きを促す。

「はぁ…もう言うけど」
「なに？」
「俺が好きなの、お前だから」

淀みなく発される。
耳に流れ込む低音が心地いい。

のに、言葉の意味が理解できない。

「え…っと？」
「だからキスしても許されるし、俺はフラれた相手を忘れたことにもならん。だってそれってお前のことやもん」
「私を…好き？え？としみつが？」
「そう言っとるげ」

たじろぐ私とは裏腹に、呆れたかのように大きくため息を吐くとしみつ。
いや…待って、待ってよほんとに。

はてなを浮かべる私。

「聞きたいことあんなら全部聞け」

としみつがそう言い放った。