【東海】Deep Down (ページ22)

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緑ルート８ページ22

「あんだけ熱い視線送られたら、寝れるもんも寝れねーよ」
「べっ、熱くないし！」

変な汗が出る。
いつもみたいに、適当な言いわけが思いつかない。
ばちっと合った目に吸い込まれそうになる。

「それ、もう終わり？」
「どれ…」

右手を掴まれて、そのままとしみつの頭に乗せられる。
じっと、目で訴えてくるとしみつ。

「…はいはい、これで満足？」

嫌味っぽく、髪をくしゃくしゃにしてやる。
これもばれてたの？
一体いつから寝たふりを…
やだもう恥ずかしい、消えたい。

「うわ！お前！なでろって言ったんだよ！」
「一回も言ってませーん」
「屁理屈言うな！」

くすっと笑われて。
その笑顔に目が釘付けになる。

あぁ、やっぱり。
好きだなぁ。
こんなささいなことだけで、私を幸せな気持ちにさせるなんて。

すると、仕返しとばかりに、としみつの手が私の髪をかき乱す。
酔っているからか、本当に寝起きだからなのか、あたたかい体温が伝わる。

その手がゆっくりと降りてきて、私の頬を両手で包み込んだ。

…ふにふに、横に引っ張られる。
ちょっとドキッとしたのは内緒。

「やめへ」
「やらけー…」
「ねぇって、」
「ぷっ、変な顔」
「誰のせいよ！」

むっとして、同じようにとしみつの頬へ手を伸ばす。
やっぱりあったかい。

「つめてっ！」
「あ、ごめん」

そういえば、さっきシャツを洗ったせいで手が冷え切ってたんだった。
同時にキスマークのことを思い出して、少しへこむ。

「…別に、ちょうどいい冷たさだし」
「本当？じゃあ失礼しますね？」
「おいやめろ！」
「わあ！めっちゃ伸びる」
「あっそ…」

口調は荒くても、結局はされるがままのとしみつに思わず笑みがこぼれる。
あと、いい大人がふたりしてなにやってんだっていうおかしさと。

「あっれ？私より変な顔じゃない？」

ふふん、と笑ってとしみつを見る。
すぐに罵倒が降ってくるだろうと、そう身構えていたら。

「…え、なに」

私を見る目が、あまりにも優しくて。
予想外の反応に、思わず動きが止まる。

「いや、やっと笑ったなと思って」
「へ…」
「ここ来てから、お前一回も笑ってなかったやん。だからなんていうか、心配…で」

俺の変顔で笑顔んなったのは不本意だけどな、とひとこと。

…なにそれ。
ここでそれはずるすぎるよ。

私のことを気にかけてくれていた、それだけで頬は緩みっぱなしで。
ついでに涙腺も緩みかけて、慌ててぐっとこらえる。

この気持ちまでは悟られないように。