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36笑えない瞳 ページ36

バタンと助手席側の車のドアが強めに閉められる。





逃がさないとでも思っているのだろうか。





あいにくですがFBIへの復帰がかかってるので君から逃げたくても逃げられないんだけど。







そうこう思っているうちに彼が車に乗り込みエンジンをかけ、ハンドルを握る。







「話は全部聞かせてもらいました」









車が発進して間もなく信号は赤になった。








「なぜあんなこと言ったんですか?」




『…あんなこととは?」




「とぼけないでください。これでも僕は腸が煮えくり返る程、怒っているんです」








信号待ちのため安室さんの顔がにっこりと私の方へ向けられる。





だから、目が笑ってないって。






『何かあれば私が彼の身代わりになる。この言葉に嘘偽りはないですよ?』



「…そこまで思うほど彼が好きなんですか?」



『……』







続きは言えなかった。




好きにも色んなカタチがある。




それを彼も汲み取ったのか、それとも赤信号が青信号に変わったからか、彼も口を閉じた。





この何とも言えない空気を変えようと車の窓を開けてみる。






柔らかな冷たい風が私の頬をすり抜けていく。






日本に戻ってから私はこの風や景色。
四季を織り成す全てがとても懐かしく愛おしく感じる。






私はこの国が好きだ。




春には桜を愛で、夏には花火を見て、秋には美味しものを食べて、冬には雪で遊べる。





長いようで短いこのサイクルは思ったより楽しい。





日本に連れて来てくれた秀くんには感謝している。







「………」





『なんですか?』







チラチラと視線を感じたので彼に問いかける。







運転中なのによそ見するんじゃないよ。







「怒っているか気になったもので」



『怒ってなんかいませんよ。むしろ怒っているのは安室さんの方なんじゃ?』





窓の景色から彼の方へサッと視線を移すと、ブロンドの細い髪がサラサラと風になびく彼の横顔があった。







「えぇ。Aさんの我が身を捨てるというのは気に入りませんよ」



『赤井秀一の為…だから?』









流石に際どい質問すぎたかなと口にして少し後悔する。








「赤井のこともありますが、僕はただ」







そこまで言いかけて首を横に降ると








「…なんでもありません」









笑顔の裏に秘密を隠した。
やっぱり目は笑っていなかったけどね…。

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作者名:星香 | 作成日時:2019年5月8日 17時

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