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25酔っ払いには分からない ページ25

『あむろさーん』








いつまでも考え事をしている彼に寂しくなったので呼びかけてみる。








「なんですか?」









すると意外と早く反応してくれた。









『このお店のライってお酒を全部注文してから片っ端から割っていきましょー?』







「魅力的なお誘いですが、出禁になりかねないのでやめてくださいね」









そう苦笑混じりにやんわりと断る声がお会計をと店員にカードを渡していた。







しかもブラックカード。









え?安室さんってやっぱりただの探偵じゃないよね?









そう考えながら目の前に置いていたグラスをもう空けてしまおうと、飲み込むと









『あれ?水だ』









お酒の味がしない。








誰や、私のグラスすり替えた犯人は。






するとそんな考えが伝わったのか






「Aさん飲みすぎてたみたいなので水に差し替えましたがダメでしたか?」







と眉根を下げて聞いてくる。








あざとい生き物だな…。









『だめにきまってるじゃないで……すか』









それでもなんとか反論しようと頑張ったが、瞼が重い。









睡魔には勝てない。
それが人間なんです。
知り合いに隈を作ってまで日常生活を送っているやつがいるんですが、不健康極まりないと思います。









そんなことを考えていたら最後にクスクスと笑う安室さんが見えた気がしたが、もうすでに視界は真っ暗。









朦朧とする意識の中で、以前にも感じたことがあるふわっと体が浮き上がる感覚にも動じないあたり意識は飛ぶ寸前。









知らずに彼の腕あたりの服をぎゅっと掴んでいたことすら分からないのだから。









彼が歩く度にゆりかごのように揺れる振動は私には心地よすぎた。









眠りの世界へ誘われる私に彼は話しかける。








でも、無理だ。
もう私は寝るよ。







意識が落ちていく感覚の中で









「無防備な人だ。あの男が貴方を気にかけるのも無理はない」









そんな言葉を言っていたことも知らないし









「おやすみなさい。お姫様」









そう言って頬にキスをしていたことも知らないんだよ。

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作者名:星香 | 作成日時:2019年5月8日 17時

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