17恋人ごっこにも程がある ページ17
「Aさん一口ください」
あまりにもカップルらしい発言に、あ"?と思わず言いそうになったのは内緒である。
世にいうあーんを強要するとは安室透…恐ろしい男。
『あむ…透さん、ここ人前ですよ?』
「いいじゃないですか。いつもはやってくれてるでしょ?」
やってないです。
よくも次から次へと嘘を吐けるその頭脳、私にもくれない?
そしたら今すぐ秀くんをギャフンと言わせにいくんだから…!
とまぁ、苛立ちを込めてこいつの分のパンケーキを切り分けてるわけなんですけど
「なに考えてますか?」
なんかあからさまにさっきと気配が違うので顔をあげてやりましたよ、えぇ。
そしたらなんとですね、笑顔の下からとてつもない威圧感を感じるではありませんか。
『いや、その…知り合いのことを思い出してたんだけど』
「まさか男じゃありませんよね?」
なんなんだ安室透。
急にどうした安室透。
ん?あぁ、そっか。
これ演技だもんね。
そりゃカノジョの浮気を疑わなきゃいけないわ。
『うん、でもただの知り合いだし透さんが心配することは何もないですよ』
そう説得すると
「ならいいんです」
元の彼に戻った。
どうやら私の回答は正解だったようだ。
「それで?まだですか?」
『何がですか?』
少しムッとした表情に顎でクイッと私のパンケーキをさす。
いや、なかったことにしようよこれ。
ブスッとフォークでさして彼に差し出すとパクリと食べた。
ほんとに食べるんかい。
うん、間違ってはいないなんだろうけどあんまり嬉しそうに食べられるとさ…
「美味しいですね」
心拍数狂うからやめてくれない?
これあれでしょ?
この後、口の端にクリームついてますよ?とか言いながら親指ですくって舐めちゃうような展開でしょ?
そんなことしたくないので細心の注意を払って食べよう。
そうしよう。
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作者名:星香 | 作成日時:2019年5月8日 17時