１３温度のない人 ページ13
『それを知っているってことは、どうやらあの写真は本当に君が撮ったってわけね』
「えぇ、そうですよ。調べるのは簡単でしたが、偽名がわかった時にはとても驚きました」
『は？どこにも驚く要素なんてないでしょ？』
なーに言ってるんだこいつと思いながらゆっくり振り返ると、暗がりでも月明かりに照らされてる顔が見える。
なにその軽蔑した瞳。
不思議に思って銃口を眺めていると
「何度聞いても気に入らない名前だ」
酷く冷たい声がそう呟いた。
ていうか、口調も変わってるよこの人…。
赤井っていう名前に何かしらの因縁を抱えているようだが、まさかその赤井ってやつ赤井秀一じゃないよね？
……。
ありえるわ。
だって秀くんはこの人のこと知ってたみたいだし。
これもう終わりじゃん。
多分、私この人の腹いせに銃でﾊﾟｧﾝされるよ。
困ったな。
まだあの世にいくわけにはいかないんだけど…。
どうしたものかと考え込んでいると、いきなり銃口がおろされる。
「僕は赤井Aに用はない。僕が用があるのは篠崎A。お前だ」
.
『私になんの用があるってわけ？』
「お前には僕の手足になってもらう」
『冗談はやめ』
「僕の正体が、知りたいんですよね？」
『っ……』
あ、やばい。
動揺しちゃったからもう誤魔化せないわ。
バツが悪くてどうにもこの場から逃げたい気持ちに駆られる。
この状況から逃げるなんて、あのキザな怪盗にしかできないくらい無理難題だけど…。
「まぁ、受け入れるしか貴方に残された道なんてないですよ」
もうどうなってもいいのでとりあえず私をさらってくれる悪党はいないかなぁ…。
なんなら赤井秀一でもいいからさ、誰か来てよ！
「……早く答えて貰えませんか？僕が待ちくたびれる前に」
終わった…。
私の平穏な生活終了のお知らせです。
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作者名：星香 | 作成日時：2019年5月8日 17時
