夏の魔法３

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初めて、名前で呼んでもうたし。

神ちゃん、びっくりした顔してる。


ここまで来たら、
引くに引かれへんやろ。


腹括ってまえ。


「松岡さん、
俺ら、実は付き合うてるんです。
仕事の時は仕方ないですけど、
プライベートでちょっかいかけんのは、
やめてもらえませんか？」


はっきり言い切った。


きっと怒ってはるやろなって、
若干、ビビりつつ、松岡さんを見たら。


くくって笑ってはる。


え？何？


「重岡、お前、なかなか見込みあるわ。
智洋に彼氏が出来たって報告受けて。
一緒に出張に来るっつうもんだから。
俺がどんな男か見極めてやろうと思ってよ。
お前なら安心して、
大事な智洋を任せられるわ」


まさかの、俺、テストされてた？

嫉妬させるんも、折り込み済み？


「松岡さん！
人が悪いですって！
俺もうほんまに嫉妬で頭おかしなりそうやったんすから！」


「ははっ。
まあ、今夜は二人っきりで楽しめよ。
あっ、ちなみに、
俺が過去に智洋を好きだったのは、
事実だからな。
付き合ってたのは、
ほんのひと月とか、
そんぐらいだったけど」


付き合ってた、


なんちゅう、パワーワード。

再起不能になりそうなダメージ受けて、
ふらつきそう。


そんな俺の穏やかでない心中なんか知らんとばかりに、
松岡さんは、


「じゃあな！
俺は一人で飲み直すとするか！
また明日な！
いちゃつき過ぎて遅刻すんなよ！」


豪快な笑いを残して、
去ってかはった。


神ちゃんは、

困ったような、
照れてるような、

複雑な表情。


めちゃめちゃに可愛ええ。







どっちでも一緒のシングルやろうけど、
俺の部屋に。

神ちゃんの荷物、こっちに持っておいでって言うたら、
素直にそうしてくれて、にやけそう。


それで松岡さんの不敵な笑いが消えるわけちゃうけどな。


静かな部屋にシャワーの音が響いてる。


気もそぞろで、狭い中をうろうろ。


落ち着け、俺。


神ちゃん、過去に何人彼氏おってんやろ。


千織先輩とは、
大学入ってすぐに別れた言うてた。


それから１０年近くも流れてんもん。


そら、何人かはおったって考える方が自然よな。

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