夏の魔法

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「はいっ。
頑張りますっ」


敬礼した俺を見て、

神ちゃん、今、ちょっと、笑み漏らしたよな？

な？


俺の親友。

本質的なとこは変わってないねんて。


絶対にそう。


「あと何やねん、
あの大学のサークルノリみたいな自己紹介」


「すいません・・・」


「もう済んでしもた事はしゃあないから、
桐谷さんの言うこと真面目に聞いて、
忠実に仕事するねんで？」


「うん、あ、はいっ。
神ちゃん、
神山課長は指導してくれないんっすか？」


「なんで俺が新人の教育やらなあかんねん。
そんな暇あるか」


ギロっと睨まれた。

怖ー。

背筋、凍りついたでっ。


「じゃあ、俺、デスク戻るから。
初日、お疲れさん」


神ちゃん、そう言うて、
あっさり席に戻ってってもうた。



ま、仕事では距離置くように言われたけどさ、

つまり、プライベートやったらええんやんな？


また仲良くなりたい。


あの時のことは・・・

神ちゃん、もう忘れたんかな。


やからあんな、
冷静な顔して、
俺を見れるねんな？


そのことに、
ほっとしてええはずやのに。


少し寂しい気もする。



待ち伏せしよって決めて、
また資料を読みつつ、
仕事中の神ちゃんを盗み見る。


パソコンに向かう姿。

何件か電話もしてる。


はー、めっちゃカッコええ。


神ちゃん、
多分今もコーヒー苦手やねん。

苦そうに、顔しかめてんもん。


なんで無理して飲んでんねやろ？


理由は知らんけど、可愛ええなあ。


女子社員、全員、神ちゃんに惚れてまうやん！

女子社員だけやなくて、
男性社員も例にもれへんはずや。


それはちょっと嫌やな。


なんやろ、この感情は。


壁の時計が１９時になる頃。

神ちゃん、やっと仕事終わったみたい。


気付けば、社内に人、そんなに残ってへんし。


これで話しかけられる！


浮き足立ってたのにな。


うちの課の藤井さんていう、
まるで彫刻みたいなイケメンが。
神ちゃんに話しかけてるやん。


「神ちゃん、終われそう？」


「流星。
もう終わるわ、待って」


耳だんぼで、盗み聞き。


敬語ちゃうし！


流星って・・・


名前で呼ぶほど、仲良ええんや。

同期なんかな。

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