夏の魔法

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こんなイケメン、
俺の２８年近い人生の中で、
初めて出会ったってぐらいの完成度のルックス。


その藤井さんの視線の先には、
みんなにご飯やお酒勧められてる、
神ちゃんの姿。

再会して以来、
俺には仏頂面しか見せてくれへんのに、
照れた顔して笑てるねんで？


けど、それが、やばい可愛さ。

見惚れてまうやんけ。


藤井さん、
切ない顔して、
神ちゃんの事、見つめてる気がする。

俺の気のせい？


「最近睡眠不足なんで。
酔うてまうから、やめときます」


神ちゃん、お酒は断ってるみたい。


神ちゃんと最後に会ったんは、
二十歳過ぎたばっかの頃。

高校ん時のみんなで集まって、
飲みに行った。


その時は、
神ちゃん、
お酒、弱い言うてやって、
ほんまに酎ハイ２杯とかで酔っ払ってた。

まあ、あれから時間も経ってるし、
強なったかもやけど。


話したいけど、
他人のフリしろ言われてるから、
近寄られへん。


けど、俺、隠し事って下手やねん。


「重岡くん、神山課長のこと、そんな気になるん？」


桐山課長に聞かれてしもた。


「神山課長て、モテはるんすね」


「社内一かもしれへんな。
史上最年少で、
出世コース乗ってるから女子社員にはもちろん、
可愛いらしいからな、
実は男にも人気あるで？」


聞くんやなかった・・・


「あの彫刻の藤井課長補佐より？」


「流星はクールで近寄り難いからな。
みんな遠くから憧れるだけみたいやな」


「へえ・・・」


「まあ、どんだけ言い寄られても、
神ちゃんは興味ないみたいやけど」


桐山課長の言葉に、
ちょっと嬉しなってしもた。

今、恋人はおらんってことやろ？


「そうなんすか？」


「うん。恋愛はしない主義？
そう見えるけど」


「しない主義・・・」


高校ん時の俺みたいやな。


まあ、俺は恋愛がなんたるかも分かってない、
クソガキやったけど。


この胸のざわざわの正体。

一体、何やねん。


大人になれば、
俺も神ちゃんに相応しい相手になれるような気でおったけど、

歳だけ重ねて、
結局、何も成長出来てへん。

世界放浪して、
いろんな人種のいろんな生き方見て、
視野が広がった気でおったけど、

ただ、縛られず、自由奔放にやってただけ。

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