夏の魔法

夏の予感。(２０２１夏) １ ページ28

赤side


２０２１年５月。

神ちゃんはとにかく忙しい。

課長っていう役職が、
こんなに忙しいものなんか、

神ちゃんが完璧主義過ぎて忙しいんか、

会社で働いた事のない俺には分かれへんねんけど。


俺が入社して、１０日間。

定時で帰ったんは、一回きりで、
あとはずっと残業続き。

なんで知ってるかって？

毎日、待ってるからに決まってるやん！


神ちゃんは迷惑そうやけど、
めげへんねん。


そんでな、高校ん時もそうやったし、
なんとなく予想は出来てんけど、

神ちゃんてさ、やっぱし、めちゃくちゃモテるねん。


鬼の神山課長言われてるくせにな。

ドS具合と、
可愛ええ笑顔のギャップがたまらんて、

社食で、女子社員が噂してんの、
聞いてしもた事あるねん。


今日は待ちに待った俺の歓迎会。

という名の、
ただの飯会やわ。


俺らの所属する広報一課の人だけやなくて、
関わり深い営業部の人や、
デザイン部の人も来てくれてる。


神ちゃん、
急に常務に呼び出されたとかで、
遅れるって。

店の入口気になるねんけど、
個室の中華で、全く見えへん。

円卓の俺の右隣には、営業部の桐山課長。

年上やし課長やのに、
めっちゃ気さくな人で、話が弾んでる。


「重岡くん、神ちゃん、厳しいやろ？」


急に神ちゃんの話題で、
分かりやすく心臓が跳ねた。


「あっ、はい。
でも、神ちゃ、
神山課長が、誰よりも頑張ってはるから、
俺もついて行かなあかんなって思てます」


「神ちゃん、一人で仕事抱え込むとこあるねんな。
下に回す事も覚えてかなあかんねんけど。
完璧主義やからなあ。
重岡くん、はよ一人前なって支えてあげてな？」


「はいっ。頑張りますっ」


そこに、待ち侘びてた神ちゃんが登場。


こっち来て欲しかったけど・・・


「神山課長！こっち！空いてますよ！」


神ちゃんのこと、
営業部の人たちが連れてってしもた。


男も女も、みんな神ちゃんを狙ってるように見えてまう。


ふう、

おっきなため息が聞こえた。


いや、俺のんちゃうで？


俺の真向かいの、藤井さんのもんや。


藤井課長補佐って、彫刻みたいな顔してるよな。

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