夏の魔法

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「しげ、学祭までに絶対に作ろな」


「決まりな！
夏休み、部活の後、居残りしよ！」


「ええよ」


「約束やで？」


布団の隙間から小指出したら、


「子供か」


て、指切りはしてくれへんかった。









海で泳いで日焼けして疲れたせいか、
すぐに深い眠りに落ちてった。


多分、みんなもそうやと思う。


寝返りうった神ちゃんが、
ごろんと転がってきて、
ぶつかって、半分だけ目が覚めた。


神ちゃん、
寒いんか、
くるっと丸まって寝とってさ。

可愛ええねんて。


浴衣が着崩れて、
半分はだけてる。

帯も取れかかってるし。


冷房、切ってやろ、思て、

リモコンに手を伸ばした時、


神ちゃん、俺に抱きついてきた。


「俺で暖取らんとってや」


苦笑いしてまう。


神ちゃんて、
ほんま、いろんな顔持ってて、

奥がどこまでも深い人やから、

どんどん知りたくなるねんて。


「・・・しげ、むにゃ、んにゅ、」


寝言や。


「神ちゃん？なんて？」


「し、げ、ぇ」


俺の名前、呼んでるよな？


「ん？何？」


愛おしい生き物やわ、ほんま。


髪の毛、つい、撫でてしもた。


無意識の神ちゃんのちっちゃな口が、
むにゅむにゅ、言うて、動いてる。

何言うてんのかなって、
じっと見てたら・・・


ちゅ、って、俺の唇に触れた。


え・・・？


今の何？

今のって。

俺のファーストキス！！！


神ちゃんは、全くの無意識や。

夢の中。


俺を前の彼女と間違えてる？


神ちゃんの元カノは、
元生徒会長の、須藤千織先輩。

才色兼備の非の打ち所がない人や。


二人は、
東ヶ浦高校きっての、
理想のカップルやて、有名やったのに、
割とすぐ別れてしもてんて。

理由とかは知らんけど・・・


「神ちゃん、俺やで？
誰かと間違えてる？」


「しげ、しげ、」


また俺のこと呼んでる。


ほんま、一体、どんな夢見てんねやろ。


明日、からかったろ。


神ちゃんの匂いは、微かに甘くて、落ち着く。


スイーツばっかり食べてるせいちゃう？


ぎゅっと抱き合うたまんまで、

俺も眠りに落ちてった・・・






頭の上で騒がしい声がしてる。

眠・・・


「かみしげっ。起きろって！」


「時間やで！
淳太にどやされる！」

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