【extra story】罠 ページ45
.
真っ白な部屋。
そこに、2人の男がいた。
「…もう、限界のようですね」
その内の1人、長い藍色のボサボサ髪に丸眼鏡の男…シアンは、もう1人の男を見下ろす。
その男は鎖に繋がれたまま、布団もない固いベッドに横たわっている。
目にかかる黒髪は、手入れされておらず乱れている。その髪から除く青い目は、疲れを宿しつつも、強く光っていた。
「…はっ……余裕だよ」
ｼｱﾝ「強がりはおよしなさい。“その病”は地獄のような苦痛を味わうもの」
愉快そうに笑ったシアンはゆっくりと目を細める。
ｼｱﾝ「そうそう、最近……あの方とお会いしましたよ」
「？」
ｼｱﾝ「貴方の大切な大切な…姫君と」
「！？」
男の強気な笑みが消え去った。
ｼｱﾝ「その姫君から少し血を頂戴しましてね」
「てめェ…！」
ｼｱﾝ「もっと頂きたかったんですが、麦わらのルフィに邪魔をされまして」
「……麦わら、」
ｼｱﾝ「嗚呼、ずっとここにいる貴方はご存知ありませんよね。最近話題のルーキー、麦わらのルフィ。今、姫君が所属する海賊の船長です」
海賊、という言葉に、男は目を見開いた。
ｼｱﾝ「まあ、少し採れた貴重な血……調べてみたら…幼い頃よりも力は強くなってきている。もしかすると最近…覚醒したか、それに近い何かが起きたのかもしれない」
「……」
ｼｱﾝ「その血から、昔のデータを元に、とある薬を作成したのが…これです」
シアンが取り出したのは、1本の注射器。
ｼｱﾝ「薬は毒にもなり、毒は薬にもなる。試してみますか」
「な…！」
抵抗する間もなく、男の腕に注射器の針が刺さり、薬が入る。
「………！！」
刹那、男の心臓が大きく脈打ち始めた。
ｼｱﾝ「成功すると良いのですがね」
「っ思っても、ねェ事を…」
ｼｱﾝ「本心ですよ。貴方にはまだ利用価値がある」
男に背を向け、シアンは扉へ向かって歩きながら言う。
ｼｱﾝ「貴方の事を知れば、姫君はきっとやって来る」
「！」
ｼｱﾝ「是が非でも助けたいと願うでしょう。お優しい方ですから」
パタン、と扉が閉まり、男は1人になる。
「はあ…っは、…くそっ」
男は鎖に繋がれた手で拳を握り締め、力任せにベッドを殴り付けた。
ーーこれは罠だ
ーーどうか、お前は…！
男の額から、汗が零れ落ちる。
「来るな……A…っ」
その叫びは、誰にも届く事はなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 844人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏目海(プロフ) - 冬眠。さん» 承知しました。今後もよろしくお願い致します！ (2022年12月26日 20時) (
レス) id: 0c76f179cc (このIDを非表示/違反報告)
冬眠。(プロフ) - 夏目海さん» 「めぐりん」と同じ人なのですが、アカウントを移行しました。よろしくおねがいします！次のお話も楽しみに待っています‼‼ (2022年12月26日 15時) (レス) @page44 id: 4f6fc34427 (このIDを非表示/違反報告)
夏目海(プロフ) - 白猫さん» オリキャラの特権である謎めいた部分を存分に活かしたいと思います（笑）夢主の口調も一般的な夢小説の可愛い女の子からは外れているので、そう言ってもらえて嬉しいです！そして、私の体調まで気遣って下さり、ありがとうございます…！コツコツ頑張ります。 (2022年12月17日 10時) (レス) id: 0c76f179cc (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - シアンは何者なのか、まだ分からない状況だから、めっちゃ気になる！私、この話が好きな理由は、夢主の喋り方がめっちゃ好きです。更新は遅くてもいいので、体をよく休めて健康でいてくださいね！更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2022年12月16日 22時) (レス) id: ceb4aa3e93 (このIDを非表示/違反報告)
夏目海(プロフ) - カルラさん» ありがとうございます。リアルとの兼ね合いで更新ペースはまちまちですが、出来る限り頑張ります。 (2022年12月15日 7時) (レス) id: 0c76f179cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏目海 | 作成日時：2022年11月22日 22時
