第二幕 壱 ページ7
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亦か。そう思い乍ら目を覚ました。
今朝も、京極さんの夢を見た。彼が心を許してくれたような気がして、無性に嬉しかったあの日の夢。
彼の事を考え乍ら寝たりしたからだろうか。全く……小野小町の歌のようじゃないか。
「……『思ひいつ 寝ればや人の 見えつらむ
夢と知りせば さめざらましを』」
そう云えばこれも、京極さんに教えて貰ったんだっけ。私が、「好きな人の夢を見た」なんて話をした時に。
笑い乍らこの歌を教えてくれた彼の顔は、何時も通り愉しげで。私が夢に迄見る程好きな相手の事なんて、露程も気にしていないようだった。
思い出したら亦、仕事に行きたくなくなった。が
「……そう云えば今日、仕事休みだ」
私はこれでも、あの武装探偵社の一員だ。異能は持っていない為、只の事務員だが。
そして今日は、久々の有給休暇。久々、とは云っても、調査員の皆さんよりは頻繁に休ませて頂いている。一年前は特に、よく休んだ。
話が逸れたが、今日は休日。だが私には、趣味も無ければ仕事以外の友人もいない。詰まる処、暇なのだ。
「何しよう……」
いや、今日のこれは、『休養』と云う名目――と云うか目的――で取った休みだ。此処で安静にしているほうが良いのだろう。何と云っても、何もしたくない程に怠いのだから。
何だか、一年前に戻ったみたいだ。彼が居なくなってしまった、『一年前』に。
――……今日は、寝ていよう。布団に潜ってゆっくり眠って、明日はちゃんと仕事に行かなくては。でないと、一年前のように、皆さんに迷惑を掛けてしまう。
そう思って再び布団に入って、気付いた。
――今日は……京極さんが居なくなって、丁度一年目だ。
慌てて布団を剥ぎ、机の引き出しを開ける。其処には、万年筆と手帳と手紙と、その他諸々が雑然と詰め込まれていた。
一番上に置かれた手紙を取り出し、それに貼ってある付箋の、「京極さんがもし居なくなったら、一年後に見る」と云う字と、一年前の日付を確かめた。
布団を部屋の隅に除けて、正座をする。一度深呼吸をしてから、手紙の封を切った。
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ふらり火(プロフ) - あにもーさん» え、あ、ごめん! (2016年8月21日 21時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
あにもー - うん、そういうものだと思ってましたです。文がわかりにくくてごめんね (2016年8月21日 20時) (レス) id: 8d0782fc85 (このIDを非表示/違反報告)
ふらり火(プロフ) - あにもー@NL厨さん» いや、『七夕』の話の台詞やらなんやらを一寸変えるだけだよ? (2016年8月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
あにもー@NL厨(プロフ) - おぉ!楽しみー! お盆だしね、会いたいよ!!!(誰) (2016年8月20日 21時) (レス) id: a66a974f2e (このIDを非表示/違反報告)
ふらり火(プロフ) - あにもー@NL厨さん» うん、出しちゃおう!( 織田作ね……何としてでも会わせたくて、やっちゃった← (2016年8月20日 17時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふらり火 | 作成日時:2016年7月20日 17時