十五 ページ15
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「Aちゃん」
縁側に座って佇む彼女に声をかけた。
彼女はゆっくりと振り向いて、優しく笑う。
隣に座り、夜空を見上げる。
「お妙さん、今日は呼んでいただきありがとうございました。とても楽しかったです」
呑んだくれて眠った男と疲れ果てて眠った二人を横目で見る。
「私も楽しかったわ。来てくれてありがとう」
夜は静かだ。
更に光は月だけで。
そのような雰囲気だけで、何だか神聖な空気が作られる。
月光に晒されたAの肌は、更に美しく白く見せた。
「Aちゃんは家族の所に帰りたいと思わないの?」
「そうですね、つい最近までは家族なんてどうでもいいと思ってたんですけど…皆さんと過ごしていくうちに暖かい雰囲気が昔の家族を思い出すっていうか。帰ってもいいかな程度ですかね」
「へぇ。Aちゃんの家族ってどんな方なの?」
そう尋ねれば、彼女は目を細めた。
「両親はもう他界しました。でも新八君と同じように、姉が一人いて、その姉は今敏腕商人として働いています。私なんかよりも賢くて自慢の姉です」
唇を舐め、縁側で横になる。
お妙も並んで横になった。
空を掴むようにしてAは腕を伸ばす。
「私も姉みたいに強くて賢くて、皆んなから信頼される人になりたかったなぁ…」
ふと横を見れば、彼女の頬に涙が一筋伝う。
「なれてるわよ、もう。Aちゃんはもうそのお姉さんに負けないくらい立派な人に」
「お妙さんにそう言われちゃうとなんか嬉しいな…。でも私は薄情者だから…ちょっとまだ遠いんです」
だらりと腕を下げ、妙に背中を向けた。
「Aちゃん…?」
不安そうに名前を呼び、顔を覗き込んだ時Aの目はもう閉じられていて。
近くから布団を持ってきて掛け、また顔を見つめる。
それはどこか幼く、悲しげで。
(貴方は何を抱えているの?)
さらりとした髪に猫を撫でるかのように触れた。
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朝日と共に目を覚まし、床で寝ていたせいか痛む身体の節々が悲鳴をあげる。
ぐい、と伸びをすれば、床下から物音が。
気になって除けば、不都合そうな顔。
「近藤さんおはようございます。朝からパトロールですか?」
「おっおはようAちゃん、いい天気だね」
「超曇ってますよ」
皮肉めいた言葉に慌てる男。
警察なのか甚だ怪しい。
「私、まだ疑われてますか?」
なんて聞けば、少し困った顔して笑った。
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時