十四 ページ14
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「は…?」
突然変わる声のトーンに、目を丸くするA。
(ふざけんな…何とぼけてくれてんの?)
服から微かにする、大きな口を開けて笑う男の匂い…というか、奴が通う店の女らの混ざった香水の匂い。
「何されたって、別に、何も…」
「嘘つくなよ」
自分でも驚く程の低い声。
「ねぇ、早く行かなきゃ、お鍋冷えちゃいますよ?」
「ちょっと銀さん」
「早く答えてくんない?」
「なんか変ですよ?どうしたんで」
「…抱きつかれたりした?」
その言葉にぴくり、と動きが止まる。
掴む腕を離し、ソファーから立ち上がる。
小さな肢体を収めるようにして、抱き締める。
「ちょっ銀さっ」
力強く押されるも、屈しない。
「何?あいつはよくて、俺はダメな訳?」
「違っ…どういうことで」
「何が違うの?ねぇ教えてよ、Aチャン」
垂れ下がる前髪に触れた時、予想だにしない力で突き飛ばされる。
床に身体を叩きつけられ、呻き声をあげる。
はっとしたように、彼女は銀時に近づき、手を差し出した。
「ごめんなさい、銀さん…」
「いや…俺が悪りぃ…」
小さく白い手を手に取り、立ち上がる。
夜兎特有の小さな背丈のせいか、自然と上目遣いになる彼女。
(なんか、気ぃ狂うんだけど…)
「…お鍋、食べに行きましょ?」
「あっ、あぁ。そうだな」
(んだよ…辰馬の奴…)
苛つく原因なんてわかりきっていた。
そんな自身も腹立たしくて情けない。
でも、だからこそ
「銀さん?」
(こいつの隠してる事全部知りたくなる)
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「こんにちはー」
玄関から明るい声。
向かうと、にこやかなAと少しばつの悪そうな銀時。
「お鍋頂きにきました!」
人数が増え明るくなる雰囲気。
でもAの隣に座る銀時は何だか不機嫌そうな顔。
「銀さん?どうしたんですか?浮かない顔して?」
「別に何でもねぇーよ。それよりぱっつあん、お前眼鏡曇ってんぞ。アイデンティティなくしてる」
「アイデンティティって!」
ツッコミをいれるも、浮かない顔を前にしちゃあ、思うようにいかない。
そんな中、大人しい筈のAと神楽は、鍋の具で荒らそっていて。
「神楽ちゃんそれ私の!」
「ふふん、取ったもの勝ちアル」
「ふぐぐぐ…」
「まあまあAちゃん、私のあげるから」
正反対な空気に、困ってしまう自分がいた。
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時