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トントンが居なくなり、自室に戻った彼女は静かに窓際に腰を掛けて外を眺めていた。外と言っても窓から見える景色は屋敷の庭なのだが。彼女は綺麗に整備されている庭を見下ろしながら窓を開けてもう一人の客人が来るのを待っていた。
が数秒も経たない内に客人はやってきた。
「今日は愛しの恋人と対談をしていたのですか?」
姿を形は見えないが、確かにAの耳にその声は届いていた。Aが窓際の腰掛けてからそう時間は経っていない、彼女が腰をかけるよりも先に声の主は席についていたのだ。
「まぁ、そんなところよ。貴方毎日来ていて飽きないの?」
Aは誰に話しかけているのか、彼女の視線の先には誰もいない。それでもそこにはまるで人が存在するかのように、目の前に立っているかのようにAは話し続けていた。
「貴方は飽きなかったのですか、話し相手が居ないこの時間に。」
太陽は顔を隠してしまった時間帯。空には綺麗な星と共に本日の主役が一人寂しそうに浮かんでいた。まるで昔の彼女みたいに、毎晩独り寂しく泣いていた彼女みたいに。
「貴方が居るじゃない、もうそんなのは昔の話しよ。」
「独りは寂しいですものね。私が来てから貴方は笑うようになりましたよ。」
その声は優しくて優しくて。昔の彼女を知っているかのような語り口にAは気を抜けば騙されてしまうだろう。声の主は異様にAに気持ちを理解していた。どんなに苦しい思いをしているのか、どんな感情で一日を過ごしていたかを声の主は手にとるように把握していた。
「さて、今夜はこれで。」
「あら、やけに早いわね。」
「用事があるのですよ、これから。」
もう、声は聞こえない。Aは嫌な嫌な独りの時間が始まってしまった、と乱暴に寝具の上に飛び乗った。
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因幡 - 続き楽しみにしてました… (2020年4月24日 13時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
えりか(プロフ) - こんばんは、初めてコメントさせていただきます。設定やストーリーがとても面白いです!続きがどうなるのかとても気になるのですが、もう物語を更新する予定は無いのでしょうか? (2020年2月29日 2時) (レス) id: bcece27663 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きっくん x他1人 | 作成日時:2019年10月13日 21時