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仕事から帰って来て、駐車場に車を止める。
鞄を持って車を降り、ロックをかけアパートの階段を上った。
…え？
どうしてここに…？
「か、佳乃…？」
「…A、今日泊めてほしい」
「えっ？」
「ダメかな…？」
「…いいよ、今鍵開けるね。どれくらい待ってたの？」
「20分は待ったかな」
「それなら体も結構冷えたでしょ。ご飯まだ炊いてないからさ、先にお風呂入ってくれない？」
「…A、ありがとう」
「うん。今準備しちゃうから、クローゼットの下から2段目あるバスタオル見つけといて」
「うん」
佳乃は今、実家を出て、武藤くんと同棲しているはずだ。
今日泊めてほしいということは、きっと何かあったのだろう。
今の私には佳乃を家に入れることしか出来ない。
だから、そうした。
「お風呂ありがとう」
「うん。ご飯もちょうど炊けたし、野菜炒めとたまごスープももうすぐできるから、もうちょっと待ってて！」
「よそっちゃうね」
「ありがとう〜、助かる」
佳乃が手伝ってくれたおかげで、すぐにご飯を食べ始めることができた。
「いただきます！」
「A、たまごスープ美味しい！」
「でしょ？ 自信作よ笑」
何口か食べた後、佳乃の箸は止まった。
「…」
「…どうした？」
「…何があったのか言ったほうがいいよね」
「どうして？」
「だって、今もこうしてお世話になってるわけだし…」
佳乃の思い詰めた表情を見て、私も箸を置いて佳乃の目を見た。
「無理して言わなくていいよ」
「えっ…？」
「佳乃が言いたいなら聞くし、言いたくないなら聞かない」
「…Aは昔からそうだったよね」
「そうかな？」
「私が宏輝を好きになって、Aには伝えておきたいと思ってスタバ誘ったのになかなか言い出せなくても、Aはそう言ってくれた」
「今の私には、ここに佳乃を泊めることしかできないけど、ここで良ければいつまでも泊まっていいし、好きなときに出ていけばいいよ」
「ありがとう」
少しの沈黙の後、佳乃は意を決したような顔をした。
「A、聞いてもらってもいい？」
私は迷わず、はっきりと答えた。
「いいよ！」
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作者名：なつらい | 作成日時：2018年8月5日 17時
