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「なんで俺がここに居るって……」
「私を誰だと思ってるんですか。自他共に認める川上さんのトップオタですよ!」


 ドーンと張った胸を叩きながら、やけに自慢げな顔をしている。こっちはこうして居場所を探り当てられた事に、若干の恐怖を感じるぐらいだと言うのに。いや、もう彼女に至っては今更だからどうでもいいけれど。


「川上さんの居そうな所を一通り回ってたんですけどね。ラッキーな事に、川上さんを見かけたって人が居たので」


 ほぼ根性ですよ――なんて言って笑う彼女は、本当にいつも通りで。まるで地球が滅びる事を知らないかのようだった。


「…………」


 彼女に会ったらきっと決意が鈍ってしまう。そう思っていた。


 二週間前に世界の滅亡を告げられ、そこから短い間で死への覚悟を決めてきたつもりだった。世界全体が終わるのだから、これはもう仕方のない事なのだと。だけどきっと彼女の顔を見たら、死ぬ事を惜しいと思ってしまうから。だから――。


「にしても、卒業してから構内に入るの初めてだったから、なんかちょっと変な気分ですね」


 教室の中をぐるりと見渡しながら彼女が言う。キャッキャッとはしゃぐその様子が、流石に今日ばかりは癇に障った。


「……何でそんなに平然としていられるんだよ」


 想像していたよりも低い声が出た。


「え……?」
「俺ら、もうすぐ死ぬんだよ? 分かってんの? おかしいだろ、そんな普通にして……」


 酷い言葉を投げかけているという事は理解している。でも、あまりにも普段通りの彼女を見ているのが辛くて。


 だけど彼女はいつだって、俺の言葉なんてまるで気にしない様子でいたから。きっと今だってまた「川上さんの当たりが強いな」程度にしか思っていないんだろう。


 ――そう思っていたのだけれど。

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奈都(プロフ) - さっちいさん» 名作第一位更新とのありがたいお言葉で恐縮です。一年半以上も前に書いた作品ではありますが、こうして新たに読んで頂けてとても嬉しいです! (2021年8月6日 23時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
さっちい(プロフ) - 私の中の名作第1位更新しました…すごく好きな作品です! (2021年7月29日 10時) (レス) id: ebeed9cbc6 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 清華さん» ありがとうございます。悲しい終わりではあるのかも知れませんが、それでも各二人にとっての幸せの形を描いたつもりでいます。泣いて頂けたら嬉しいな、と思いながら書いていたので本望です…! (2020年4月8日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
清華(プロフ) - 一気に7人分をworld endを見ますた...心痛いですよ、めっちゃめちゃ泣きました、もうきついです(笑) (2020年4月1日 16時) (レス) id: 1c085b2c66 (このIDを非表示/違反報告)
Hërø(プロフ) - 奈都さん» 夢は大丈夫だったのですが時々それぞれのメンバーの最後を思い出してグッときてます笑 (2020年1月3日 1時) (レス) id: 7ab3904f14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奈都 | 作成日時:2019年12月9日 20時

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