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 人間が人間に生まれ変わるとは限らない。前世は猫だった、なんて与太話を聞く事もあるが、だったら来世がそもそも地球上の生物ではなくなる可能性だってあるのだろう。


「拓哉さん、宇宙人になっちゃうんですか?」
「なんで僕だけなの。その時はAもだよ」


 僕一人だけ宇宙人に生まれ変わっても困る。そう言うと彼女は「私もですか!?」と大きな声を上げた。何だか随分と深刻な顔をしている。


「えっ、どうしよう、グレイみたいな感じになるのかな……。それともタコになっちゃうかも……」
「タコ?」


 何それ、と首を傾げながら問うと、彼女は「タコですよタコ!」と手の動きでそれっぽい形を作った。


「ほら、よく漫画であるじゃないですか。タコみたいな火星人」
「あまりにもイメージが古典的だな」
「もしも私がタコみたいな火星人になっちゃったとしたらどうしよう。きっと拓哉さん、私だって分かんないですよね。言語も通じないだろうから説明のしようもないし……」


 驚くほど真面目な顔をしてそんな事を言い出す彼女が愛おしくて仕方ない。同時にどうしようもなく悲しくなった。彼女のこういう所を見られる時間が、もうあと僅かしか残されていない事に。


「分かるよ」


 静かな水族館の中、自分の声がやけに大きく響いたような気がした。膝に置かれたままの彼女の手に、そっと自らの手を重ねる。


「Aだけは、絶対に分かる」


 分かるに決まっている。何の根拠も無いけれど。そもそも輪廻なんて信じちゃいない方の人間だけど。それでも、彼女が生まれ変わった先で僕と出会う事を望むのなら。たとえどんな姿になっていたとしても、彼女だけは分かる自信があった。


 僕の言葉に彼女は一瞬呼吸を止めた。直後、ふにゃりと柔らかく、けれど一抹の切なさを纏って笑う。


「拓哉さんが分かってくれるなら、今日、世界が終わっても怖くないかも」


 ――嘘だ。だって彼女の小さな手はこんなにも震えている。

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奈都(プロフ) - さっちいさん» 名作第一位更新とのありがたいお言葉で恐縮です。一年半以上も前に書いた作品ではありますが、こうして新たに読んで頂けてとても嬉しいです! (2021年8月6日 23時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
さっちい(プロフ) - 私の中の名作第1位更新しました…すごく好きな作品です! (2021年7月29日 10時) (レス) id: ebeed9cbc6 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 清華さん» ありがとうございます。悲しい終わりではあるのかも知れませんが、それでも各二人にとっての幸せの形を描いたつもりでいます。泣いて頂けたら嬉しいな、と思いながら書いていたので本望です…! (2020年4月8日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
清華(プロフ) - 一気に7人分をworld endを見ますた...心痛いですよ、めっちゃめちゃ泣きました、もうきついです(笑) (2020年4月1日 16時) (レス) id: 1c085b2c66 (このIDを非表示/違反報告)
Hërø(プロフ) - 奈都さん» 夢は大丈夫だったのですが時々それぞれのメンバーの最後を思い出してグッときてます笑 (2020年1月3日 1時) (レス) id: 7ab3904f14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奈都 | 作成日時:2019年12月9日 20時

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