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慌てた様子でわたわたと両手を振るこうちゃんの後ろで、須貝さんと山本が
「でも実際、伊沢、もう一年以上彼女居なくね？」
「そうですよね。僕や須貝さんがQuizKnockに入ったちょっと後に別れたんだっけ」
「だったよな。俺、伊沢から浮いた話聞いた事無いし」
「僕も聞いた事無い」
というような調子で、人の恋愛事情について呑気に話している。須貝さんと山本がQuizKnockに入ったのは一昨年の秋の事だ。前の彼女に振られたのはその二〜三ヶ月後だったので、大体二人の言っている通りの時系列になる。
「つーかさ、俺の恋愛話とかどうでも良くね？ 別に聞きたくないでしょ」
「お前の恋愛話自体は正直どうでもいいけど、やたらニヤついてるのが若干気持ち悪い」
「須貝さんヒデェわ」
「てか、やっぱ恋愛関係なんだ？」
「いや、そういう訳じゃないんすけど……」
もういいでしょこの話は――と続けて逃げるようにキッチンへ向かう。彼らもそれ以上、特に追究しようとはしなかった。
シンクの前でシェイカーにプロテインと水を入れて振りつつ、空いている方の手でスマートフォンを操作する。可愛いスタンプで一区切りがついたAさんとのトークは、恐らく今日はもう更新される事は無いだろう。
やり取りを読み返している内に口元が緩んでいる自分に気付き、ああ成る程これは駄目だ、と自戒の気分になった。人目に付く所ではもう少し気を引き締めなければ。またニヤついていると言われてしまう。
シェイカーを片手にキッチンから戻りつつ、執務室に置いてあるホワイトボードを見遣る。QuizKnockの予定表になっているそこには、明日投稿予定の動画についても記載されていた。
「いよいよ明日か……」
三月も残す所あと二日。明日は大学院の中退と起業について公式に発表する。恐らく多くの人にとっては寝耳に水だろうが、俺や他のメンバーたちはこの為に彼是数ヶ月かけて動いてきていた。どんな反応が返ってくるのか不安が無い訳ではないが、走り出した以上もう止まる事は無いのだ。
――Aさんもきっと驚くだろうな。
ぼんやりと頭の中に彼女の姿を思い浮かべる。次に会う時には、きっと彼女もこの話を知っていてくれるのだろう。
どんな顔をするかな、応援してくれると嬉しいな――と。勝手ながらにそんな事を考えつつ、シェイカーの蓋を開けて口をつけるのだった。
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…！ (2019年9月14日 16時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています！！ (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2019年8月11日 10時
