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二度と会う事も無いだろう――と思っていた人から映画のお誘いを受けたのは、数日前の事だった。
またリサーチに協力して欲しいと言うので了承の旨を告げた所、日程を決める内に、時間に余裕があるのならついでに映画でもどうか、と言われたのだ。正直面喰ったが、テレビ局で貰ったチケットを余らせているので、そのままにするのは勿体無いという話らしい。そこで何故私を誘うのかという疑問が無いでもなかったが、まあ話の流れなのだろう。
これは俗に言うデートなのでは？ という思いが一瞬脳裏を過ったが、あくまでも本題はリサーチの方だ。この間の私の感想がそんなに役に立ったのだろうか。と言うか、彼らの周りにはそんなにも『普通の社会人』が居ないのだろうか。まあいいけれど。
兎にも角にも、こうして伊沢くんとの二度目の会合が決まったのだった。
前日の夜から悩みに悩んだ服装は、この時期に妥当であろう花柄のスカートと白いトップスだ。別に色っぽい話ではないのだろうけど、一応、男性から映画のお誘いを受けた訳で、普段よりも三割増しで可愛い格好を選ぶのは当然の事だろう。
山手線から日比谷線への乗り換えを一度挟み、待ち合わせの駅に到着する。待ち合わせ場所はシネコン寄りの改札を出た所だが、土曜日の昼過ぎとあって、なかなかの人でごった返していた。
待ち合わせ場所に到着した旨をLINEで送ると、伊沢くんの方ももうすぐ着くと返信があった。その三分後、ジャケットを羽織った彼の姿が視界に入った。
「Aさん」
彼は着けているマスクを軽く引っ張り、口元を覗かせながらこちらへやってきた。
「こんにちは。伊沢さん、今日はお誘い頂いてありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ付き合って貰っちゃって」
行きましょうか――と言って歩き出す彼の隣に並ぶ。長い地下道にはそこそこ多くの人が行き交っているが、伊沢くんに気付く様子の人は居なかった。まあマスクを着けているし、普通にすれ違う程度だったら私も気付かないかも知れない。
「伊沢さん、花粉症ですか？」
「そうっすね。毎年この時期大変なんですけど、今年は特にキツい……」
肩を竦めながら、伊沢くんはハハッと力無く笑った。
＊ ＊ ＊
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…！ (2019年9月14日 16時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています！！ (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2019年8月11日 10時
