【QK】Gravity

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「ついでにリサーチしてきた」
「リサーチ？」


　何のですか――と川上が続ける。


「動画見てるって言うから、じゃあ動画の感想聞けりゃいいかなって思ってたんだけど、記事の方も読んでくれてるみたいよ。朝Knockとか通勤時間に見てるらしくて」
「へえ。記事については何か言ってました？」


　記事を読んでくれている、と言うと川上の表情があからさまに嬉しそうなものになった。ウェブ側のメイン編集者なだけあり、川上の記事に対する熱意はQuizKnockのメンバー内でもかなり強い。


「営業の仕事もやってる人らしいから、時事系はお客さんとの話でも役に立つって。まあその辺も踏まえて後で会議の時に話すわ」


　金曜日はQuizKnock編集部会議の日だ。編集部会議の主な参加者は俺、川上、山森さん、こうちゃんとなっている。昨日聞いた感想は、一意見として取り上げても良いだろう。


「何にせよ、想定外に実のある話が出来たんですね」
「そうだなぁ。何だかんだ二時間以上話してたわ」
「二時間！？」


　素っ頓狂なその声は川上にしては珍しい。両目を大きく見開き口をポカンと開けた彼と視線がぶつかる。


「何だよその反応」
「いや、珍しいなと思って。伊沢さんが仕事でもないのに、ほぼ初対面の人と二時間も……しかも女性でしょ？」
「そうだけど」
「酒は？」
「無い。ずっと素面」
「うわぁ……」


　川上があからさまに顔を顰める。信じられないものを見るような目つきをされるが、まあ気持ちは分からんでもない。


「いや、ほぼ初対面で酒無しで二時間とか、俺、絶対無理だわ……」
「俺も無理だと思ってたよ」
「じゃあ、よっぽど話し易かったんですね、その人」
「そうねえ」


　また話してみたいと思う程度には話し易かった。という言葉を呑み込むように、チキン南蛮を口に運んだ。


　＊ ＊ ＊

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