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「そんなにこだわるもん?」
「独身時代はあとちょっとしか無いの! もう少ししたら私、人妻になっちゃうんだから! 普段は別にすき家でも松屋でも何でもいいけど、独身ラストのデートでのご飯がそれは絶対嫌!」
どうせデート相手も結婚相手も俺なんだから別にいいじゃないか、と思ったが、色々と譲れない所があるらしい。女心は本当に難しいものだ。一応、周りの人間よりは女性の感情に寄り添える方だと思っているのだけれど。
その後、牛丼生活に入ってから数日して、彼女が根性で探し出してきた黒毛和牛専門の牛丼――と言うか牛重の店に二人で行く事になったのだが、それはそれは美味だった。こうちゃんにも教えてあげれば良かったかも知れない。
* * *
どうしても入籍日と挙式日を同じ日にしたいというのが、彼女の絶対譲れないらしい希望だった。結婚記念日を入籍日と挙式日のどちらにするのか迷うのが嫌だ、という理由である。だから本番当日である今日、俺たちは自宅から区役所を経由して式場へ向かうという、実に忙しい動きをする事になった。
二次会の予定も無いので披露宴後に区役所へ行く時間は充分あるのだが、式の前に入籍したいというのもまた、彼女の希望の一つだった。新しい姓になった状態で「結婚しました」というお披露目をしたいらしい。よく分からないが俺には特にこだわりも無いし、何より人生で一度しか無い経験なのだから、彼女の希望に沿う事にした。
そんな訳で俺たちは早朝から慌ただしく区役所へ向かい、時間外窓口にて婚姻届を提出した。証人欄はそれぞれの友人に頼もうという話になっており、俺は河村に書いて貰っていた。最初その話を持ち出した時の河村は、
「なんか重要そうな役割だし、緊張するからちょっと嫌だなぁ」
なんて言っていたが、流石に俺も彼とは長い付き合いだ。声色が嬉しそうだったのは分かっていた。
ちなみに「いいでしょ、どうせ河村の時には俺が書くんだから」と言ったら「なんで当然のように自分が頼まれると思ってんだよ。自信家だな」と笑われたのだが、あいつが身近な人間に頼むとしたら間違いなく俺だろう。別に自信家でも何でも無い。現状に基づいた単なる予測だ。
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…!と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです! (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2021年1月31日 13時