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あまりにも堂々と言い張るので流石に吹き出してしまった。同時に、私の先程の推測が間違っていた事が分かる。私の出方を伺っているなんてものじゃない。彼は私の返答なんてとうに分かっているし、そこに確固たる自信があるのだ。だから後は諸々のタイミングを見計らっている、ただそれだけなのだと思う。
「今のそんな笑う所か?」
「だって……、ふふっ。ああ面白い。駿貴さん、そういう所あるわよね」
とは言え、彼はまだ院生だ。一応、次の春には卒業する目途を立ててはいるものの、実際にどうなるかは分からない。だから別に急ぐ話でもないだろう。
「まあでも、予約だけさせてよ」
「予約?」
「ウェディングドレスを着たAの隣に立つ権利の予約」
私から顔を逸らしてそう言った彼の耳が、赤く染まっているのが分かる。心なしか普段よりも声量が控えめで、彼が若干緊張しているであろう事が窺えた。これだってもうプロポーズみたいなものだと思うけど、一応、まだ違うという事なんだろうか。まあ何にせよ、私の返事なんて最初から決まり切っているのだ。
「嫌ね、今更。そんなの、随分前から駿貴さんだけの権利でしょう?」
笑いながら返した私の言葉に、一瞬驚いたように目を見開いた彼は、「それもそうか」と続けて肩を竦めた。
「確かに。元々、他の男に譲る気なんか全く無いわな」
そう言ったかと思うと、私の右手に提げている荷物をそっと取り上げ、代わりに温かい手で包み込んできた。指を絡ませて繋ぐ手の温度に、何だか心がほくほくしてくる。
私たちもいつか、今日の福良さんたちのようになれるだろうか。なりたいな、と。そんなに遠くはないであろう未来を思い浮かべながら、ゆっくりと歩を進めるのだった。
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奈都(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます。それぞれの気持ちに寄り添って書いてきたつもりではあるので、感情移入して頂けているととても嬉しいです。やっぱり最終的にはきっちりゴールインしてほしい…!と思いつつ亀の歩みですが、これからも見守って頂けると幸いです。 (2021年10月1日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新に歓喜です‼︎Gravityから読ませていただいている側としては感情移入しすぎて、若干泣きそうになりましたが、結婚考えてくれてたんだとホッとしました(笑)何度読み返してもキュンとできる奈都さんの小説、、私の元気のもとです! (2021年9月26日 2時) (レス) @page31 id: 1f7bb03b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2021年1月31日 13時