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「ちょっと、いつまで寝てんのよ!田中くん!!!」
怖い先生は声のトーンをヒートアップさせていた。
……そんな大きな声を出したら、いくらあの樹でも起きちゃう。
……お願いだから、起きないで…。
大我「……大丈夫?」
『えっ』
大我「なんか、辛そうだよ?熱あるの?」
あまりにも考えすぎて、眉にしわがよっていた。
こんな私に今、優しくしないでほしい、とでも思ってしまう。
「田中くーーん!起きてるの?田中くん!!」
神様は私に良いことばかり与えてくれるわけでない。
樹「……ん…、はぃ、今おきました、…」
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私の部屋から樹が寝ぼけながら応える。
………終わった。
大我を恐る恐る見ると、思考が停止したように固まっていた。
「…え?今どこから田中くんの声した?」
女の先生はちらちら見回しているが、大我は私が小さく開けていた部屋の扉を無理矢理開ける。
大我「…………、」
彼は樹の姿を見て立ち尽くしていた。
…もっとなにか怒ってくれた方がよっぽどマシなくらい、彼は無言のままだった。
別にやましいことは一切してない。
でも、いくら幼馴染みでも男女が1つの部屋で一緒に寝ることに理解出来る彼氏はいないと思う。
…私は、大我を傷つけてしまったんだ。
「あんた達!なんでこの部屋に田中くんがいるのよ!!」
女の先生が声を荒らげる。
樹「あのっ、これは、その〜、」
「あんた達、2人して変なことしてたんじゃないわよね?!」
樹「…いやっ、それは違くて」
大我「違うも何も、なくない?」
ずっと黙っていた大我が、魂が抜けたように目が虚ろになりながらも、批判する。
すると、大我は私の目を見る。
大我「…そういうことでしょ?」
『……っ、ちがっ、』
大我は、息していないような、怒っているような、でも切なそうな目で私を見つめる。
その目にうっすらと涙が溜まっているようにも見えた。
なぜか、これ以上、私は言葉を声に出すことが出来なかった。
……いま私が何を言っても、きっと彼は信じてくれない。
何も言葉を発せられずに、ただ大我の目を見つめることしかできなかった。
違う、そのたった2文字の言葉が、出てこない。
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りこ - すごい面白いです!また交換していただけると嬉しいです (2020年4月27日 9時) (レス) id: 4d62ada711 (このIDを非表示/違反報告)
みな(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2019年9月7日 0時) (レス) id: dc867d738f (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん。 - とても、面白いです。更新待ってます。 (2019年8月4日 8時) (レス) id: 94770c9e14 (このIDを非表示/違反報告)
なつみかん。(プロフ) - annintamtamさん» コメントありがとうございます!今後も楽しんでいただけるように頑張ります!!! (2019年7月20日 11時) (レス) id: c0f86098d8 (このIDを非表示/違反報告)
なつみかん。(プロフ) - ゆなさん» コメントありがとうございます!大好きだなんて、嬉しくてにやにやしちゃいますっ笑 頑張りますので応援よろしくお願いします♪ (2019年7月20日 11時) (レス) id: c0f86098d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なつみかん00 | 作成日時:2019年7月6日 19時