検索窓
今日:20 hit、昨日:28 hit、合計:21,015 hit

116話 ページ21

ぼんやりとしている時に話しかけられると驚いてしまうのは人間としてどうしようもないことだ。そのため、急になあ、と声をかけられて飛び上がる。振り向けばそこにいたのはアントーニョだった。彼はあまりの俺の様子に「驚かすつもりはなかってん」と前置きをした。その表情は不満げだ。



「だめやなあ、全然うまくいかへん。ええ子見つけた〜と思たらみーんなパートナー持ち。それかもしくは…」

「みんな狙いはあのギャルソンだって?」

「そのとーり。」



残念そうに肩を竦めてみせるアントーニョ。確かに先ほどまで彼がいた場所には今アルフレッドが給仕に向かっていた。



「あいつなあ、どっかで見たことある気がするねんけど。タチバナちゃんの知り合い?」

「まあ…うちの探偵事務所の助手です。ちなみにアーサーさんの従兄弟。」

「どーりで食えんやつやと思ったわ。あの眉毛によう似とる。」



アントーニョさんは苦虫でも噛み潰したような渋い表情で追い払うように手を払う。マスターから聞いた話だが、どうやら彼とアーサーはどうしようもないほどとことん気が合わないらしい。それなのにマスター程ではないものの二人の付き合いは長く、少年時代は顔を突き合わせるたびに喧嘩をしていたのだそう。それは今でも変わらないことのようだ。聞いた時にはあのアントーニョにもそういう相手がいるということにとても驚いた。

俺の方に来たのは料理が並んだテーブルの側だからだろう。小皿にいくつかの料理を取り分けた後も、「慰めたってや〜」とそのまま共に食事を楽しむことにしたようだった。



「タチバナちゃんはどうなん?美人さんばっかやで。」

「うーん…あわよくば、とは思うんですけど。」

「まあ確かにタチバナちゃんぽくはないか。」



一人うんうんと頷き口に肉を運ぶ。
俺は流れで会場内を一瞥したものの、やはり強く惹かれる人はいない。第一ここに集う人間の殆どは肉食的で燃えるような恋を望んでいる。俺のタイプは典型的大和撫子であるから、単純に趣味に合わないのだ。ドレスから溢れんばかりの胸にも、ラインを強く強調された腰にもそこまでの魅力は感じなかったし、尻だって安産型だななんて的違いのことを思うばかりである。確かに男の浪漫であることは否定しないけども、それはまた別の話だし。
そもそも俺には刹那的な恋より長く紡げる愛の方が重要で、それ自体がこの会の目的とはそぐわないのだ。

117話→←115話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (92 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
137人がお気に入り
設定タグ:男主 , ヘタリア , APH   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。