110話 ページ15
歓談を続ける俺たちに、マスターは美丈夫を連れてこちらに歩み寄る。それを見つけたアントーニョは、何かを思いついたようにマスターと連れ立つ隣の男の腕を引いた。それにぎょっとしたのは俺たち三人。
「ちょっと!何をするのですかこのお馬鹿さん!」
「タチバナちゃん、こいつはローデリヒ。ほら、ちゃんと挨拶せんかい!」
「貴方が無理に腕を引かねばしていました!離しなさい!」
そう言ってその男は一度強く腕を振りアントーニョの拘束から逃れると、まるで酷い風にでも遭ったかのような顔でその首元を飾るタイを直す。
既に感じる癖の強さに、あの日見た男達二人の美しさを思い出しながら重ねたが、ギャップが大きい。エリザベータはこの男が好きなのか。
目の前に立たれるとアルフレッド程ではないにしても、その身長に顔を上向かせざるを得ないのだった。
「初めまして。ローデリヒ・エーデルシュタインです。」
「橘Aです。初めまして…では、ないかな。」
「おや、どちらでお会いしましたか?」
「いえ、私、エリザベータさんとは親しくさせてもらっていまして。お噂はかねがね。」
「ああ…成程、彼女と。」
喋る度に口元の黒子に目が行く。とてもセクシーである。俺には到底ない色気だ。
初めて彼を間近で見た感想はとにかく美しい、この一言に尽きなかった。
だってまるで絵画みたいな。俺はこんなに綺麗な人を見たことがないと思う。マスターだってアーサーだって顔は整っているしかっこよくて目を惹くけれど、この人は雰囲気から品の良さが漂う。本でしか見た事のない貴族のように美しい男だ。
これは誰だろうと心奪われる。あれ以来罪悪感からなのか単に気に入って貰えたのかは分からないが、ちょくちょくエリザベータが事務所に来ていた。その度にこの人を話を必ずしていったものだが、今ならその気持ちまでわかる。
「エリザがお世話になっています。」
「いえ、此方こそいつも良くしていただいて…」
ついつい数度頭を下げたが、ローデリヒはそれに驚くことなくそっと片手を差し出してくれた。どうやら俺の故郷のことを知っているらしい。
エリザベータ曰く、ローデリヒの一族も古くからこの地にあったようで、そんな彼は見ない顔にきっと俺が新参者であると配慮してくれたのだろう。優しい人である。
俺がそれをそっと握り返すのを、マスターとアントーニョは微笑んで見ていた。
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ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時