109話 ページ14
今回の依頼は仕事だったから、遅刻することなくぴったり三時にマスターの元へと向かった。
アルフレッドは約束の時間が近づく度にそわそわと落ち着かない様子で、ならばと俺はほんの少しだけ変装をしている。と言っても今はまだ眼鏡をかけた程度ではあるが。人種なんて変装どうこうで偽れる代物ではないのだ。
目的地に着けばマスターが優しく迎えてくれる。どうやら一番乗りのようだった。
「来てくれてありがとう。嬉しいよ。」
「俺の他にも来るんですよね?」
「うーん、そのはずなんだけどあいつらちょっと時間にはルーズで。」
まあ、もう少ししたらきっと来るよと言うマスターの言葉通り、他のスタッフはそれからきっかり十五分後、姿を現すのだった。
______
二人揃って来たヘルプに対し、まず最初に俺を満たしたのは驚きだった。なぜならその両人が既に俺の知った人物であったからだ。
「すまんなあフラン、こいつが変なとこばっか行きよるから…」
「何を言うのですかこのお馬鹿さん。最終的にはきちんと辿り着いたでしょう。」
「アホぬかせ!自分何度連れ戻されたか忘れたんか!?」
一人は日焼けによる褐色肌と独特の訛りがやっぱり素敵だし、もう一人には先日迂闊に手を出して怖い目にあった記憶が蘇る。
アントーニョさんと、確かローデリヒ・エーデルシュタイン。
ぴしり、と音を立てて固まった俺にまず気付いたのはアントーニョさんだった。先程まで隣の身なりの綺麗な男に眉をひそめていたのを、カウンター席の俺を見るなりわかりやすく嬉しそうにする。どうしようもないので軽く会釈をすると、片手をあげながらこちらへと歩み寄ってきた。ちらりとその背後に目を向ける。ローデリヒはマスターと何やら話しているようだ。
内心溢れ出る冷や汗を必死に取り繕いながら、アントーニョに挨拶で返した。
「この前ぶりやなあ!タチバナちゃんもフランに呼ばれとったんか!知らんかったわあ!親分びっくりや!」
「マスターにはだいぶお世話になってまして…アントーニョさんこそ、お知り合いだったんですね?」
「せや!結構付き合いも長うてな。どーしても言われたらなあ、断れへん。」
「あー…なんとなくその気持ちはわかります。」
彼は仕事では関係を割り切り利益を重視するものの、その実オフの場面ではとても優しく、様々な世話を焼いてくれる。多少調子のいいときもあるのだが。マスターは非常に面倒事には関わりたがらなかった。
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ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時