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8話 ページ10

「どっちも、ってことはフランシスみたいな感じか?」

「あー…まあ、それに近いところもあるんでしょうけど。」


溶けた氷で薄まったウィスキーがそいつの喉を通り過ぎていく。視線はどことなく遠くを見つめていて、それを俺は「故郷を想っているのか」と直感した。
アジアの真っ黒な瞳が宝石のように煌めいて揺れていた。夜の海でもあるようで、横顔からでも吸い込まれてしまいそうだった。

でも、とタチバナは続ける。



「マスターとは違います…俺、昔探偵やってたんですよ。それこそ殺し以外はなんだって引き受けるような。」

「へえ、探偵!」

「はい。便利屋としてはそこそこ名がありまして。裏側のお仕事もやってました。」



あんまり詳しくは言えないんですけどね。
怪しまないでください、と笑ってひらひらと手を振る男。
こんなひ弱そうなやつが、と俺は少し拍子抜けしたものだが、髭は満足そうに数回頷いてた。おそらく推測と一致していたのだろう。



「そっか。だったら尚更知っといてよかったじゃない。」

「はは。なにかお世話になることがあるかもしれませんね。」



ばちり、とウインクを決めたクソ髭と素っ気ないように言った俺を見て、タチバナはその髪を揺らした。




.





「ところでタチバナちゃん、明日のご予定は?」

「えっ」

「明日はバーも休みだしね、良かったらお兄さんとデートでもどう?夜まで忘れられない1日を君にプレゼントできるよ。」

「けっ、どうせトラウマだらけで忘れらんねえ1日だろ。誰彼構わずナンパしてんだこの髭は。気にすんな。」

「えっ」

「はーあ?お兄さんとデートして幸せにならなかった相手なんてただのひとりも居なかったんだからね!誰彼構わずってわけでもないしー?お兄さん眉毛みたいな趣味の悪い奴は絶対NGだから。」

「あ?誰の趣味が悪いって?もっぺん言ってみろコラ。」

「何度だって言ってやんよ!第一その顔についてる眉毛からしてセンス悪すぎだから!!」

「てめえ表に出やがれ!ぶっ潰してやる。」

「きゃーっ!これだから元ヤンってこわーい。」

「まあまあ、2人とも落ち着い…」

「これが落ち着いてられっか、クソが!」

「ええ……」



夜は更けていく。
結局朝方まで飲み明かし、喧嘩し合い、それをタチバナが宥めながら、最終的には全員が酔い潰れる程には俺たちは夢中でその日の出会いを楽しんだ。

そうして朝がやってくる。
目が覚めた時、タチバナの姿はそこには無かった。

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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時

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