41話 ページ43
「んん……?」
俺は寝ていたはずだった。
目が覚める。理由はわからない。何故だかぱっと目が覚めたのだ。
身体を起こす。ぎしりと俺の下で音が鳴って、寝かされていたのがソファであったことがわかる。
覚醒しきれていない頭を抑えながら、ゆっくり辺りを見回した。
薄暗くて……室内?だと思う。多分。どことなく寒い。床も壁も灰色。きっとコンクリートだ。あまり広くはない部屋。隅にはダンボールが積んである。中身は不明。天井はガラス張りになっていて、黄色の大きな月が除いている。扉がひとつ、俺の体の正面にあった。
何処だろう。何故俺はここにいるんだろう。
ソファに体を預けていたのを立ち上がろうとして、身体が動かないことに気が付いた。首や手をやんわりと動かすことは出来る。ただ、身体は何かに縛り付けられたように動かない。
段々じんわりと汗が浮かんでくる。それと同時に目も覚めていった。指先がひんやりとしている。
どことなく危ない気はしていた。
「起きたんだね、Aくん。」
背後からかつり、といった音と共に声が聞こえる。
首は背後まで振れない。だから見えない。わからない。でも、なんとなく察することはできる。
背中がぐっしょりと湿っていく感覚を、いつもなら嫌なものとして捉えていたかもしれない。しかしそれは今俺の気を引くことすら出来ていない。そんなことはどうでもよかったんだ。どうでも。
かつりかつり、といった音は段々こちらに近付いてきていた。多分足音。俺はそれを怖いと思う。近づく度にそれは増していくように感じる。
ついに音は俺の真後ろで止まった。ソファの背もたれを挟んだ向こう側に、今、誰かがいる。
「僕、会いたかったんだよ。ずーっと。」
ぞわり。
耳元で囁かれた声に叫びそうになったが声が出ない。口を開いて出てきたものは白い息の塊だった。
ここに武器があったなら、と考えて、それでもこいつには勝てないとどこかで分かっていた。俺じゃ勝てない。だから逃げてる。
来ないでくれと震える身体で願った。捕まったら帰れない。怖い。誰か。
後ろからすっと伸びてきた手から逃れることなんてできなかった。
「ねえ、なんで僕から逃げたの。なんで僕を、」
ひとりにしたの
頬を寄せて抱きしめられる。
違う、違うんだよ。なあイヴァン。俺はただ、俺は。
.
「……え、ねえ、ねえってば…ねえ!!」
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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時