35話 ページ37
「ふーん…まどマキにタイパニ…ナルドにワンビか。大手は大体あるな。あとはアメコミ系統。」
「君、わかるのかい?」
「いや…俺の兄貴がこういうの好きだったからな。ある程度は。」
「へえ、最高のお兄さんじゃないか。」
ラックに並べたフィギュアを眺めながら彼は部屋の中を一つ一つさらっていく。フィギュアにはあえて触らないようにしているみたいで、他の服とか家具とかはそりゃもうべたべた触ったのに、俺が大事にしていると分かるとものすごく繊細に扱った。
全部そうならよかったのに、なんなんだいこの差は。
不満そうな俺の顔から何か読み取ったのか、彼は苦笑いを浮かべる。
「俺の性分もあるが依頼人が必ずしも被害者であることはないからな。むしろ無実を証明したいがためだけに俺が雇われることもある。だから多少強引になっちまう。癖なんだよ。」
「…エスパーか何か?」
「ありありと書いてあったぜ、その顔に。」
咄嗟に手で顔を覆うと、彼は今度は小さく「ふふっ」と笑ったのがわかった。俺ってそんなに分かりやすかったかな?
今までの彼の行動を思い出して話と重ねると、確かにまあ仕方ないのかなあ、って気もする。だからってベッドの下を漁る必要は断じてないけれど。
彼は一通りフィギュアを眺め終わったのか、窓際に立って外を眺めている。窓からは庭と表の通りが見えて人々が行き交う様子がわかる。俺はこの景色が好きだ。
ただ、今庭の木に一枚のタオルが引っかかっているのがすごく恥ずかしいけれども。無いと思ったら…洗濯物乾かしている時に飛んだのか。後で取りに行かなきゃ。
窓際にもお気に入りのフィギュアを並べてあって、その中でもスーパーマンのフィギュアは一際大きい。彼はそのフィギュアにも手を触れることは無かった。
フィギュアの日焼け?確かに気になるけどね、これは観賞用だからある程度は気にしないよ。
すぐ横で「ふぅ」と息を吐く音がした。
視線を向けると彼の顔が良く見える。そしてその声も。「なんだ、そういうことかよ」
「え?」
「幽霊の正体わかったぜ。…ったく、やっぱりしょーもねえ話だったじゃねーか……」
「は、嘘だろ!?本気で言ってる?」
「勿論本気だよ……今から証明してやるから。」
ちょっと来い、と指でくいっと招いて、彼は部屋を出ていく。階段を降りて、どうやら外に向かっているらしかった。
俺も急いで外に向かう。呆れたような口調で彼は言った。
「順を追って説明していこう。」
87人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時